
看護師の退職金は勤続年数や職場によって様々。当てにできる?
医療に従事する看護師も、一般企業で働く会社員のように退職金が支払われることがほとんどです。
しかし、職場によってその制度や支給額は異なります。
「そもそも退職金ってあてになるの?」という疑問や不安を持つ看護師の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、看護師の退職金制度の種類、勤続年数ごとの退職金の目安、職場ごとの退職金の目安について紹介していきます。
目次
看護師の退職金制度
看護師に限らず、退職金の制度は主に3種類あります。
職場によって採用している制度が異なりますので、事前に確認しておきましょう。
退職一時金制度
退職時に退職金をまとめて支給される退職金制度です。
退職金というと、この退職一時金制度を多くの方がイメージするのではないでしょうか。
支給される金額は、勤続年数や退職時の役職や保有資格、仕事への貢献度、退職理由などさまざまなことが加味されて決められます。
たとえば、自己都合の退職よりも、職場都合や定年退職の方が支給金額は高くなる傾向にあります。
企業年金制度
各職場で独自に行っている年金制度です。
規定された年齢に達してから定期給付される制度で、退職一時金制度のようにまとまった金額が支払われるものではありません。
退職一時金制度と企業年金制度をどちらか選ぶ、または併用するなどのケースがあります。
前払い制度
在職中に、決められた金額が月給や賞与に上乗せされて支給されるタイプの退職金制度です。
たとえば、他の職場に比べて基本給が高いケースでは、前払い制度を採用している可能性があります。
企業としては、まとまった退職金を一括で用意するリスクを避けられ、看護師は収入を増やせるメリットがあります。
ただし、上乗せされた分だけ税金や社会保険料が高くなる点はデメリットです。
また、退職時にまとまって支給されないため、老後に向けた貯蓄や運用をすることが大切です。
退職金が無いケースもある
退職金制度は法律により定められたものではなく、企業側に導入の義務はありません。
そのため、職場によっては上記のような退職金制度が導入されていないケースもあります。
とはいえ、厚生労働省の「平成30年 就労条件総合調査」によれば、医療・福祉業界では87.3%が退職金制度を導入しているとされています。
そのため、ほとんどの職場で上記いずれかの退職金制度を採用していると考えられます。
不安な場合は、退職金制度を導入しているかどうか、就業規則で確認しておきましょう。
出典:厚生労働省の「平成30年 就労条件総合調査」
【勤続年数別】看護師の退職金
看護師の退職金は、一般的には勤続3年目くらいから支払われることがほとんどです。
その後、5年目、10年目、20年目と勤続年数によって支給される金額が増えていく傾向にあります。
以下は目安となります。
- 勤続3年目:20~30万円ほど
- 勤続5年目:50~100万円ほど
- 勤続10年目:200~300万円ほど
- 勤続20年目:400~600万円ほど
- 勤続30年目:1,000万円前後
勤続3年目ではそれほど多くは支給されませんが、定年退職目前となる勤続30年になると、1,000万円前後になるケースもあります。
新卒入職でも50代以上になりますので、勤続年数が多いことはもちろんですが、退職時の役職が高いことや、保有資格が多いことなどもあって支給される退職金が増えやすいようです。
【職場別】看護師の退職金
前項で紹介した、勤続年数ごとの退職金の金額はあくまでも目安で、職場によって支給金額は大きく異なります。
国立病院・公立病院・私立病院
規模の大きな国立病院・公立病院・私立病院の場合、勤続30年で退職時に1,000~2,000万円ほど退職金を支給される可能性があります。
国立病院の場合は元々、「国家公務員退職手当法」に基づいて支給されていましたが、現在は国立病院機構の独立行政法人化が施行されています。
とはいえ、ほぼ同等の額が支払われることが多いです。
公立病院は「地方公務員法」に基づいて退職金が支給されます。
自治体によっても異なりますが、国立病院よりやや少ない程度の金額が支給される傾向にあります。
私立病院は、職場規模や経営状況によって支給額に差があります。
1,000万円以下ということもあれば、2,000万円ほど支給されることもあるようです。
その他の小規模病院やクリニック
上記よりも規模の小さい病院やクリニックの場合は、800~2,000万円ほどと幅があります。
規模の小さいクリニックであったとしても、黒字が続く経営状況であれば、退職金は大病院と同等かそれ以上に支給される可能性があります。
逆に赤字経営の場合は、退職金がかなり低くなることも珍しくありません。
退職金の有無はもちろんですが、経営状況はどうなのか調べておくとよいでしょう。
公務員
公務員は法律によって退職金が定められています。
国家公務員・地方公務員それぞれの退職金算出方法は以下の通りです。
- 国家公務員:退職手当額=退職日の俸給月給×退職理由別・勤続年数別支給率
- 地方公務員:退職手当額=基本額(退職日給料月額×退職理由別・勤続年数別支給率)+調整額
ちなみに国家公務員の看護師は、刑務所や宮内庁などに勤務します。
地方公務員の看護師は公立の保育園・保育所・幼稚園、自治体の保健所や保健センター、福祉施設などに勤務します。
退職金の有無を調べて老後への備えをしましょう
看護師の退職金は、職場によってその支給制度や支給額が異なります。
退職金制度そのものがない職場もあります。
また、国公立病院などの大規模病院はそれなりに多くの金額が支給されますが、私立病院や規模の小さいクリニックは経営状況により支給額が左右されます。
満足できる退職金を受け取りたいとお考えでしたら、まずは求職票を確認しましょう。
さらに、病院の就業規則や経営状況を確認したり、老後のために貯蓄・運用したりすることをおすすめします。