男女で異なる尿道カテーテルの挿入方法を解説。看護師が気をつけたいポイント
尿道カテーテルは、何らかの理由により排尿困難な患者さんが安全かつスムーズに排尿できるように行う処置です。
陰部の形が男女で異なるため、尿道カテーテルの挿入方法にも違いがあります。
「男女それぞれで気をつけるべきポイントを知りたい」と思っている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、男女別の患者さんへの尿道カテーテル挿入方法やポイント、長期療養患者さんに対して気をつけるべきポイントについて解説します。
目次
カテーテルとは
カテーテルとは、検査・治療を行うために体内に挿入する柔らかい医療用の管のことです。
カテーテルは体内に挿入するものであり、体外に繋がれる回路やチューブ、ラインとは分けて使われます。
カテーテルのつくり
カテーテルの素材や形状などのつくりは、用途や目的によって異なります。
太さは1~10mmほど、長さは数cmのものもあれば、2mほどと長いものもあります。
素材はナイロン・シリコン・テフロン・ラテックスなどの高分子化合物が使われます。
素材ごとに異なる特徴があり、たとえばラテックス製は安価ですが、耐久性が低いです。
また、ラテックスアレルギーのある患者さんには使用できません。
シリコン製は耐久性が高く、ラテックスアレルギーの患者さんにも使えますが、高価です。
そのため、患者さんの状態や検査・治療内容によって使い分けます。
尿道カテーテルとは
尿道カテーテルは尿の排出を行う際に、尿道から膀胱へ挿入する管です。
患者さんが自力で排尿ができない、尿量を正確に測定したい、全身麻酔下の手術を受ける、といったケースで行います。
尿道カテーテルを行う前の準備
一定期間ごとに尿道カテーテルを挿入する、維持的導尿を行う際には、以下のものを準備します。
- 導尿セット(カテーテル、鑷子、滅菌潤滑剤、消毒綿球)
- 尿器と尿器カバー
- 滅菌手袋
- 膿盆またはビニール袋
- ティッシュ
- 処置用シーツ
持続的に尿を排出する、持続的導尿(膀胱留置カテーテル)を行う際には、以下のものを準備します。
- 膀胱留置カテーテルセット(膀胱留置カテーテル、蓄尿バッグ、鑷子、滅菌潤滑剤、消毒綿球、滅菌水入りシリンジ)
- 蓄尿バッグおよびカバー
- 固定用テープ
- 膿盆またはビニール袋
- バスタオル
- 処置用シーツ
- 手袋
- マスク
- ビニールエプロン
女性:尿道カテーテル挿入のポイント
女性の患者さんへ尿道カテーテルを挿入する際は、以下の流れで行います。
STEP1:患者さんにカテーテルが挿入しやすい姿勢になってもらう
女性は必ずしも尿道口が正中にあるとは限らず、上下左右に大きくずれることがあります。
これは妊娠や加齢に伴って、骨盤内臓器脱が生じることが理由です。
そのため、まずは尿道口がより見えやすいように、患者さんに膝を屈伸させる開脚位となっていただきます。
開脚位を保持できない患者さんであれば、クッションを使用するなどの工夫が必要です。
STEP2:陰部を持って尿道口を確認する
尿道口をはっきり視認するために、小陰唇をしっかり開きます。
わかりにくい場合は、小陰唇を上部に引っ張りましょう。
縦方向に伸びているのが尿道口です。
STEP3:消毒およびカテーテルの挿入
小陰唇を開いたまま、消毒を行います。
消毒後、小陰唇を開いている手は離さず、カテーテルに潤滑剤を塗布して尿道口へ挿入します。6~10cmほど挿入したら尿流出を確認しましょう。
なお、患者さんが異常な痛みを訴えたり、出血が見られたりする場合は挿入を中止し、医師に報告しましょう。
STEP4:滅菌蒸留水の挿入とバルーンを膨らませる
カテーテル挿入後、滅菌蒸留水をゆっくり注入してバルーンを膨らませます。
患者さんが強く痛みを訴えるようであれば、尿道内でバルーンが膨らんでいる可能性があります。ただちに蒸留水を吸収しましょう。
バルーンを膨らませたら尿道カテーテルを軽く引っ張ります。
カテーテルが抜けないことを確認し、さらに1~2cmほど挿入します。
STEP5:カテーテルを固定する
最後にカテーテルを固定します。
固定の際は、引っ張られないようにカテーテルに余裕を持たせ、大腿部内側または下腹部にテープで固定します。
男性:尿道カテーテル挿入のポイント
男性の患者さんに尿道カテーテルを挿入する際は、以下の流れで行います。
STEP1:患者さんにカテーテルが挿入しやすい姿勢になってもらう
男性は尿道の長さが20cmあり、湾曲しています。
また尿道口のある陰茎は、長さが患者さんによって異なります。
尿道損傷を防ぐためには、患者さんにリラックスしてもらい、尿道の進展を心がけることが大切です。
まずは雑談等を交えリラックスしてもらい、患者さんには仰臥位になって足を軽く開脚してもらいます。
STEP2:陰茎を持ち尿道へカテーテルを挿入する
陰茎を持つ際には、陰茎の左右を指で軽く挟みます。
陰茎の前後で挟んでしまうと尿道が圧迫され、カテーテルの挿入が難しくなるので注意しましょう。
また、包皮を完全に反転させることが大切です。
陰茎を挟んだ状態で上に引っ張り、尿道口をしっかり進展させます。
その後、尿道を開いて消毒を行い、カテーテルに潤滑剤をつけて挿入します。
STEP3:挿入に抵抗を感じたら角度を変えて挿入する
カテーテルを挿入し、尿道球部を超えると括約筋部の抵抗を感じるようになります。その際は、陰茎の角度を変えるとともに患者さんに口呼吸してもらってリラックスするように伝えましょう。
そのままゆっくりと15~20cmほど挿入していきます。
STEP4:滅菌蒸留水の挿入とバルーンを膨らませる
尿の流出を確認したら、滅菌蒸留水をゆっくり注入してバルーンを膨らませます。
注入後はカテーテルを軽く引っ張って抜けないことを確認し、さらに1~2cmほど挿入します。
STEP5:カテーテルを固定する
最後にカテーテルを固定します。
尿道カテーテルが引っ張られないようにするために、陰茎を頭の方へ向け、下腹部で固定します。
尿道損傷の危険があるため、大腿部には固定しないようにしましょう。
長期療養患者の尿道カテーテル管理
長期療養患者さんの場合、正しく尿が出ているか、尿路感染症等を起こしていないかなどを確認することが大切です。
尿道カテーテル管理では、以下の点に注意しましょう。
蓄尿バッグの位置に気をつける
蓄尿バッグ内の尿は、細菌が増殖している可能性が高いです。
万が一でも尿が逆流すれば、尿路感染症を引き起こしてしまいます。
尿の逆流を防ぐために、蓄尿バッグは膀胱より低い位置かつ床につかない位置に設置しましょう。
尿の量・色・臭いを確認する
尿は患者さんの健康状態を教えてくれるものなので、尿の量・色・臭いなどを必ずチェックしましょう。
尿量は、食事量や摂取水分量を把握した上で確認します。
乏尿や無尿の場合、腎臓機能の低下や上部尿路の閉塞などが起こっている可能性があります。
主治医が指示する尿量をクリアしているか観察しましょう。
尿の色は血尿スケールを用いてチェックします。スケールⅢ以上に変色している場合は医師に報告しましょう。
尿の臭いは、臭気が強くなっている場合は感染が疑われます。
また、感染症であれば排尿直後に腐臭がありますので、医師に報告しましょう。
陰部のケアを行う
石鹸や流水による陰部のケア、カテーテル挿入部位の消毒には、尿路感染予防効果がないとされます。
しかし、長期療養患者さんの場合は便失禁などもあるため、爽快感やストレスの解消といった目的で陰部のケアを行います。
患者さんの負担や羞恥心に配慮することが重要
尿道カテーテルとは、何らかの理由により排尿が難しい周術期や長期療養の患者さんなどに行われる処置です。
留置することで、安全かつ持続的に尿を排出できるのがメリットです。
しかし、カテーテル挿入は患者さんにとって恥ずかしく、痛みを伴うものです。
また、尿道を傷つけるなどのリスクもあります。
そうした問題をなるべく減らすためにも、尿道カテーテル挿入の流れやポイントをおさえて、速やかに処置することが大切です。
また、尿道カテーテルは使用期間が長くなるほど、尿路感染のリスクが高まります。長期療養患者さんに行う場合は、尿のチェックをしっかり行うようにしましょう。