男女それぞれの陰部洗浄の方法を解説。看護師が配慮するべきことは?
陰部洗浄は、看護師が行う患者さんに対する日常的なケアのひとつです。
「陰部洗浄をする目的は何?」
「陰部洗浄の手順や準備するものは何?」
「陰部洗浄は男女でどう違う?」
本記事では、上記のテーマを中心に解説していきます。
目次
陰部洗浄とは
陰部洗浄とは、感染症や汚臭の予防、患者さんの爽快感を目的として行う陰部の洗浄ケアのことです。
入浴が難しい患者さんやおむつを利用している患者さんを対象に行います。
陰部洗浄の頻度は1日1回が目安で、陰部の汚染が強いと判断される場合は適宜実施するなど柔軟に対応します。
ただし、デリケートな部分の洗浄であるため、患者さんの羞恥心に配慮しながら実施しなければなりません。
陰部洗浄の目的は、患者さんの陰部を清潔に保つことです。
陰部は汚れやすい部分であり、汚れたまま放置すると皮膚トラブルを引き起こしてしまいます。
特に高齢の患者さんの場合、皮膚のバリア機能が低下しているため、陰部洗浄により清潔に保つことはとても重要です。
また陰部洗浄は、患者さんに皮膚トラブルが起きていないかを確認できるタイミングでもあります。
陰部洗浄の準備
陰部洗浄では、以下のような物品を準備します。
- 手袋(ディスポーザブル品)
- トイレットペーパー
- 陰部洗浄用のボトル(38℃から39℃くらいのお湯を入れておく)
- 陰部清拭用タオル(ディスポーザブル品)
- タオル(患者さんにかける)
- 防水シーツ
- マスク
- ビニールエプロン
- ビニール袋またはバケツ(廃棄物用)
- 石鹸等の洗浄剤(患者さんの状態に合わせて弱酸性にする)
他にも、患者さんによって必要な物品があれば準備します。
看護師の準備
感染症対策のためビニールエプロンや使い捨ての手袋、マスク等を着用します。
陰部洗浄は患者さんの羞恥心へ配慮し、なるべく速やかに行うことが大切です。
そのため、使用する物品は迅速にケアを行えるように配置します。
実際の陰部洗浄の手順・動きを意識して配置するのがコツです。
患者の準備
陰部ケアを行う患者さんや周りの患者さんに配慮して、カーテンを閉めた上で陰部洗浄することを説明します。
その後、患者さんを仰臥位にした上で膝を立ててもらい、腰から大腿部の付け根辺りまでズボンを下ろして陰部を露出します。
陰部周辺以外は、患者さんの羞恥心への配慮と身体が冷えないようにするために、できる限りタオルをかけるようにします。
防水シーツを臀部の下に敷き、使用していたおむつや尿とりパッドを広げます。
女性の陰部洗浄・手順
手順①:陰部をお湯で濡らす
洗浄ボトル内のお湯の温度を確かめ、患者さんにちょうど良いか確認しながら陰部をお湯で濡らします。
手順②:洗浄剤を泡立たせてから陰部につける
汚れを浮かせて包み込んで落とすため、必ず洗浄剤は泡立たせてから陰部につけます。
手順③:恥骨部・鼠径部を洗う
女性の場合は恥骨部・鼠径部から洗い始めます。
上から下に向けて洗うことで、尿路感染や膣炎を防止します。
手順④:大陰唇を開いて小陰唇との間を洗浄する
大陰唇と小陰唇の間は恥垢が溜まりやすいため、必ず指で開いて洗浄します。
手順⑤:泡を陰部清拭用タオル等で拭き取る
汚れを包み込んでいる泡をタオル等で拭き取ります。
この際、ゴシゴシと拭き取らず、優しくさっと拭き取るようにします。
手順⑥:お湯で洗浄剤を流す
洗浄剤が残らないようにお湯で流します。
手順⑦:陰部清拭用タオル等で水分を拭き取る
最後に、水分が残らないように押し当てるように拭き取ります。
男性の陰部洗浄・手順
手順①:陰部をお湯で濡らす
洗浄ボトル内のお湯の温度を確かめて、患者さんにちょうど良いか確認しながら陰部をお湯で濡らします。
尿道口にお湯が入らないように注意しましょう。
手順②:洗浄剤を泡立たせてから陰部につける
汚れを浮かせて包み込んで落とすため、必ず洗浄剤は泡立たせてから陰部につけます。
手順③:性器を持ち上げ包皮を体幹側に寄せる
男性器を持ち上げて包皮を体幹側に引き寄せます。
亀頭や包皮の内側などは恥垢が溜まりやすいため可能な限り洗浄します。
手順④:陰嚢の裏側も洗う
睾丸を圧迫しないように注意しながら陰嚢の裏側も洗います。
手順⑤:泡を陰部清拭用タオル等で拭き取る
汚れを包み込んでいる泡をタオル等で拭き取ります。
この際、ゴシゴシと拭き取らず、優しくさっと拭き取るようにします。
手順⑥:お湯で洗浄剤を流す
洗浄剤が残らないようにお湯で流します。
手順⑦:陰部清拭用タオル等で水分を拭き取る
最後に、水分が残らないように押し当てるように拭き取ります。
よくある陰部洗浄についての質問
ここでは、陰部洗浄についてのよくある質問について見ていきましょう。
1.陰部洗浄で観察すべき点は何ですか?
陰部洗浄では、陰部の皮膚トラブルの有無、おむつかぶれ、真菌感染の有無などをチェックします。
また、尿道カテーテルを挿入している患者さまの場合は、カテーテルの影響による潰瘍やびらんといった異常の有無も確認しましょう。
2.患者さんの羞恥心への配慮はどうすればいいですか?
陰部はデリケートな部分であるため、陰部洗浄は患者さんの羞恥心への配慮が大切です。
実施前には必ず病室の扉を閉め、カーテンを閉めてプライバシー空間を確保しましょう。
洗浄する陰部以外はタオルケットやバスタオルなどでできるだけ覆い、露出を少なくします。
その上で、できる限り迅速で適切に陰部洗浄を行いましょう。
また、何よりも大切なのは、患者さんの同意です。
同意を得るのを忘れないようにしましょう。
3.ぬるま湯を使う理由はなぜですか?
体温に近い38℃~39℃のお湯を使うことで、患者さんに不快な思いをさせることがなくなります。
また、清拭だけでは洗浄剤を拭き取るのは困難で、残った洗浄剤の影響により皮膚トラブルを招く恐れがあります。
そのため、通常は陰部洗浄ではぬるま湯を使います。
目的と手順を理解して陰部洗浄を速やかに行いましょう
陰部洗浄は患者さんの陰部の清潔を保つために行うケアであり、1日1回を目安に行います。
しかし、デリケートな部分の洗浄となりますので、患者さんの羞恥心に配慮することが大切です。
目的と手順をしっかり理解した上で、なるべく速やかに実施するようにしましょう。
また、陰部洗浄によって患者さんの皮膚トラブルを発見できることもあります。
何らかの異常がある場合は、医師へ速やかに報告して判断を仰ぎましょう。