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看護研究の進め方と書き方。知っておきたいポイント

看護研究は、ある程度経験を積んだ看護職の方が取り組む研究です。
看護の質の向上や、看護師自身の学び、ステップアップのために行われます。

本記事では、看護研究の進め方や書き方のポイントを解説します。

看護研究とは

看護研究とは、慣例的に行っている看護について、エビデンスを明確にして評価し直し、看護の質を高めることでより良い看護を実践できるようにするためのものです。
もう少し噛み砕いていうと、科学的根拠などを基に、従来の看護をより洗練させて質を高め、より良い看護を行えるようにするための研究となります。

看護研究の目的

看護研究の目的は、看護の質を向上させることです。
看護の質が高まれば、看護が発展して患者さんにより良いケアやサポートを行えるようになります。
医療・看護の需要が年々高まっている中、看護業界の質向上につながる看護研究は、とても大切な活動です。

業務改善とは異なる

看護研究と混同されやすいものに業務改善があります。
業務改善とは、看護業務の中で発生している問題を解決するものです。
科学的根拠や再現性は重視されていません。

たとえば、問題解決により現在担当している患者さんに対してメリットがあります。
一方、看護研究は、看護業務を科学的根拠に基づいて評価し、新たな看護知識を創造することで看護の質を高めるものです。
看護研究によって得られた知識は、将来担当する可能性のある多くの患者さんへメリットがあります。

看護研究の進め方

看護研究の進め方は以下の通りです。

ステップ1:研究テーマを決める

まずは研究テーマを探しましょう。
難しく考える必要はなく、テーマは身近なものでかまいません。
たとえば、「床ずれ予防でなぜこのケアをする必要があるのだろう?」など、日頃感じている疑問や悩みをテーマにして、深掘りしていきましょう。

ステップ2:先行研究や文献を確認する

テーマが固まってきたら、そのテーマに関係する先行研究や文献を確認します。
テーマと重複する研究はすでにあるのか、看護研究に活かせるデータはあるかなどを調べます。
探してみると似ているテーマはたくさん見つかるものです。
そういった場合は条件を変えて、既存研究の先を調べるというスタンスに切り替えるのも良いでしょう。

たとえば、「この研究では入院5日以内の患者さんのデータだが、10日以内や20以内に広げたらどうなるだろうか」などです。
また、文献を読むときに「本当にこの結論でいいのだろうか?」「他の見方もあるのでは?」と批判的に検討することで、先行研究とは異なる視点で看護研究を進めることもできます。

ステップ3:研究計画書の作成

研究計画書は、「このような考えを持って、このような方法で、この研究を進めていきます」といったことを書きます。
簡単に言えば研究の企画書や説明書のようなものです。

ステップ4:必要データの収集

研究計画書に沿って、必要なデータを収集します。
データ収集方法には、以下の2種類があります。

質的研究
インタビューや聞き取りにより対象者が語った内容を分析する研究方法です。
研究対象の主観的データを得られ、体験や行動などの定量化できない要因を分析できます。
また、研究テーマの新たな視点や仮説を立てるのにも役立ちます。

量的研究
アンケート用紙などを配布して回答を集める研究方法です。
数値データを集められるため、信頼性が高く仮説を裏付けるデータとして利用できます。

ステップ5:データの分析

質的研究・量的研究のいずれか、または双方から得られたデータを分析します。
データはエクセルなどを活用してまとめるのが一般的です。
まとまったら、研究の目的にあわせてデータ分布や平均値・中央値を算出していき、傾向や関係性を検討します。

ステップ6:看護研究の発表

研究結果をまとめ、看護研究発表会にて発表します。
近年は、多くの人が見やすく説明しやすいことから、パワーポイントにまとめてスライド形式で発表することが増えています。
スライド1枚の情報量は多すぎないように注意し、グラフや図表を適宜使ってわかりやすくするように工夫しましょう。

先行研究や文献を検索する方法

先行研究や文献を検索する際には、文献検索ツールや日本看護協会の図書館を利用します。

代表的な文献検索ツールの活用

代表的な文献検索ツールは以下の通りです。

最新看護索引Web
日本看護協会の文献データベースで、看護分野に特化しています。
そのため、初めて看護研究に取り組む方でも使いやすいです。
会員であれば無料で利用できます。

医中誌Web
医学中央雑誌刊行会が提供するデータベースです。
国内の医学系分野に関する論文情報が網羅されています。
看護文献もあり、絞り込みにより簡単に検索可能です。
有料にて利用できます。

Google Scholar(グーグル・スカラー)
Googleが提供するサービスです。
Web上にある学術論文を検索でき、医学系・看護系の論文も探せます。
被引用数が表示されているため、論文の質の高さを推測できるのが特徴です。
無料で利用できます。

CiNii Research(サイニィ・リサーチ)
国立情報学研究所が提供するデータベースです。
検索情報を詳細に設定すれば、目的の文献もすぐに検索できます。
無料で利用できます。

日本看護協会図書館の利用

日本看護協会の会員であれば、会員証の提示で日本看護協会図書館を利用できます。
看護研究や研修に必要な資料を収集していますので、ご自身の看護研究に沿った内容の先行研究や文献を見つけることができるでしょう。

看護研究の書き方のポイント

看護研究

看護研究は論文であり、書き方にはポイントがあります。
以下でいくつか書き方のポイントを解説します。

論文の基本的な書き方

看護研究の構成で基本的な柱となるのは「はじめに」「方法」「結果」「考察」です。
この柱をもとにして、どのような研究をどのような方法で行い、どのような結果が出たのか、そして自分はどう考察したのかを順序立てて書いていきます。
また、看護研究は人に読ませる・見てもらうものですので、「自分だけがわかる」ではなく「誰でもわかる」ように意識しましょう。

研究疑問と答えを明らかにする

看護研究を書く場合、まずは研究疑問(研究目的)とその答えを明らかにします。
研究疑問があるのに答えが思いつかない、そのような場合はデータ収集や分析が不十分であると考えられます。
もう一度振り返り、足りない分を補っていきましょう。
それでも答えが浮かばない場合、専門家や多職種の方に意見を聞いてみるのも良いでしょう。
先行研究や文献からヒントを得られることもあります。
いずれにせよ、答えのないまま書き進めるのではなく、必ず答えを明らかにしてから書き始めましょう。

より実践的な内容になるよう意識する

看護研究で大切なことは、実践的な内容であることです。
人に読んでもらう論文である以上、構成や文法を正しく整えることは大切です。
しかしそれ以上に、「臨床に役立つ実践的な内容」であることの方が、看護研究では重要です。
きれいに整えるだけではなく、多少乱れてしまっても、より深みのある内容を目指しましょう。

倫理的配慮をする

看護研究では倫理的配慮も大切です。
研究対象となる個人や施設が特定されないように注意しましょう。
もちろん、データを分析する上で、研究対象者の情報はある程度必要となります。
ですが、個人を特定できる情報は不要です。
たとえば、患者さんが研究対象であるならば、名前や入退院の年月日などの詳細は不要です。
Aさんとしたり、入院期間のみを記載したりするなど、情報をぼやかすようにしましょう。

引用は一次資料の規定に従って行う

文献から引用する場合は、一次資料を入手した上で規定に沿って行いましょう。
一次資料の規定に従わずに引用した場合、著作権侵害や無断転載とみなされる恐れがあります。
また、データの一部を変更した上で引用する場合は「改変」となり、著作権者の承諾が必要です。
文章はもちろん、図やグラフなども一次資料の規定に従って引用するようにしましょう。

日頃の疑問を研究して質の向上につなげましょう

看護研究は、看護の基礎的な知識を洗練させて、看護の質を向上させるものです。
多くの患者さんがより快適な看護を受けられる未来のために、とても有意義なものとなります。
看護研究では、テーマを決めることがとても大切です。
より多く人が興味を抱けるようなテーマ、質向上のために重要となるようなテーマなどを選びます。
まずは、日頃の看護の中で感じている疑問を深掘りしてみましょう。