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吸引について看護師が知っておきたいこと。吸引器の使い方のコツを掴もう

吸引は、患者さんの気道内にある分泌物や異物を取り除く処置であり、身につけておきたいスキルです。
スムーズに行えれば、患者さんの身体に負担なく、呼吸を楽にしてあげられます。

本記事では、吸引とはどのような処置なのか、吸引の種類ごとの手順やコツについて解説します。

吸引とは

吸引とは、「気管吸引ガイドライン2013」によると以下のように定義されています。

「気管吸引とは、人工気道を含む気道からカテーテルを用いて機械的に分泌物を除去するための準備、手技の実施、実施後の観察、アセスメントと感染管理を含む一連の流れのことをいう。」
引用元:一般社団法人 日本呼吸療法医学会「気管吸引ガイドライン2013」
https://square.umin.ac.jp/jrcm/pdf/kikanguideline2013.pdf

吸引は気道浄化法の一つとして位置づけられています。
カテーテルを用いることで、患者さん自身や侵襲性の少ない方法では除去できないケースにおいて分泌物や痰、血液などを機械的に取り除くために行われる方法です。
以降では、吸引についての基礎知識を紹介します。

出典:一般社団法人 日本呼吸療法医学会「気管吸引ガイドライン2013

吸引の基礎知識

ここでは、吸引の基本について紹介していきます。

挿入部位や吸引方法の種類
吸引は鼻腔からカテーテルを挿入する「鼻腔吸引」、口腔からカテーテルを挿入する「口腔吸引」、さらに気管挿管中の患者さんに対して行う「閉鎖式気管吸引」「開放式気管吸引」があります。

吸引のタイミング
吸引のタイミングは「何時間ごと」のように決めるのではなく、吸引すべきかどうかをアセスメントし、見極めた上で適切に行うことが大切です。
アセスメントでは痰の貯留を確認し、それが吸引できる位置にあるかどうかを見極めることがポイントとなります。

吸引チューブ挿入の長さ
吸引チューブの挿入の長さは、気管分岐部に当たらない程度であることが大切です。
咽頭から気管分岐部までは、10~12cm程度とされているため、鼻腔から吸引する場合、吸引チューブ挿入の長さは15~20cmが目安となります。
気管挿管患者さんであれば、挿管しているチューブより2~3cmくらいが目安です。

吸引圧
吸引圧については、「気管吸引ガイドライン2013」では最大20kPa(150mmHg)が推奨されていますので、それを目安としましょう。

吸引時間
吸引時間はできるだけ短時間であることが望ましく、目安は7~8秒程度です。

カテーテルの太さ
気管挿管患者さんであれば、カテーテルの外径は気管チューブ内径の半分以下が目安です。

必要物品
吸引器・吸引カテーテル・新鮮な水・滅菌手袋・サージカルマスク・ビニールエプロン・ゴーグル・アルコール綿など

その他
吸引で使用するカテーテルは滅菌処理されたものを使用し、使い捨てします。

鼻腔吸引

吸引道具

鼻腔吸引とは、鼻腔から吸引チューブを挿入して吸引を行う方法です。
口腔内吸引と比べ、患者さんの嘔気が出にくいのが特徴です。
鼻腔吸引と口腔内吸引のどちらが先かという決まりはありませんが、鼻腔吸引の方を先に行うことが多いです。
鼻腔吸引後、その刺激により痰やだ液が口の中に溜まることがあるためです。

吸引器の使い方・手順

吸引の手順や吸引器の使い方は以下となります。

  1. 吸引の必要性があるかアセスメントする
  2. 鼻腔吸引に必要な物品の準備
  3. 患者さんに吸引の目的や方法・時間を説明して了解を得る
  4. 手指の消毒を行う
  5. 吸引チューブの接続、水道水の準備をする
  6. 吸引チューブの先端を親指で塞ぎ、吸引圧を調整(最大20kPa(150mmHg)が目安)して、水道水を吸引して吸引状態を確認する
  7. 患者さんにひと声かけて断ってから、鼻腔から吸引チューブを挿入する
  8. 吸引する(7~8秒目安)
  9. 吸引チューブ外側の汚れをアルコール綿で取り除き、チューブ内に水を通して洗浄後、吸引チューブおよび手袋を廃棄する
  10. 吸引後の患者さんの呼吸状態を評価し、問題がなければ終了

口腔内吸引

口腔内吸引とは、口腔内に吸引チューブを挿入し、吸引を行う方法です。
鼻腔吸引よりも嘔気が出現しやすい傾向にあります。
その一方で、鼻腔吸引よりも痛みを感じにくく、慣れると口腔内吸引の方が楽に感じる患者さんも多くいます。
どちらを先にやるかは状況や患者さんの希望により決定します。

吸引器の使い方・手順

口腔内吸引における吸引器の使い方や手順は、鼻腔吸引とほぼ同じです。

  1. 吸引の必要性があるかアセスメントする
  2. 口腔内吸引に必要な物品の準備
  3. 患者さんに吸引の目的や方法・時間を説明して了解を得る
  4. 手指の消毒を行う
  5. 吸引チューブの接続、水道水の準備をする
  6. 吸引チューブの先端を親指で塞ぎ、吸引圧を調整(最大20kPa(150mmHg)が目安)して、水道水を吸引して吸引状態を確認する
  7. 患者さんにひと声かけて断ってから、口腔から吸引チューブを挿入する
  8. 嘔気が出現しないように気をつけながら吸引する(7~8秒目安)
  9. 吸引チューブ外側の汚れをアルコール綿で取り除き、チューブ内に水を通して洗浄後、吸引チューブおよび手袋を廃棄する
  10. 吸引後の患者さんの呼吸状態を評価し、問題がなければ終了

気管挿管中の吸引

気管挿管中の吸引には、閉鎖式気管吸引と開放式気管吸引があります。
それぞれのやり方やポイントを解説します。

閉鎖式気管吸引

閉鎖式吸引では、人工呼吸器回路の接続を外さずに吸引を行います。
人工呼吸器の補助を受けながら吸引できるため、低酸素血症や肺胞虚脱などの予防に優れています。
また、呼吸器回路を外した場合に起こる分泌物の飛散の回避や、吸引時間の短縮といったメリットがあります。
注意点としては、自発呼吸がある場合は患者さんの呼気に合わせることや、人工呼吸器関連肺炎の感染リスクを回避するための処置を正しく行うことです。

開放式気管吸引

開放式気管吸引では、人工呼吸器回路を外し、開放状態にて吸引を行います。
閉鎖式と比べて吸引チューブを操作しやすく吸引しやすい傾向にあります。
その一方で、吸引のたびにPEEP解除と換気中断による低酸素血症のリスクがあります。
また、回路着脱の必要があるため、操作は2人で行うことが望ましいです。
閉鎖式気管吸引と開放式気管吸引は、人工呼吸器回路を外すか否かが大きな違いです。それぞれの吸引方法にはメリット・デメリットがありますので、状況に応じて判断して使い分けることが大切です。

喀痰吸引の手順・コツ

喀痰吸引とは、吸引器を用いて口や鼻などから痰を吸引することです。
痰は乾燥していると固くなり吸引しにくくなります。
そうした場合は加湿を行いますが、その前に痰が固くなった要因を知るためにアセスメントします。
患者さんが脱水していないか、発熱や発汗はないかなどを見極め、その状況に合わせて加湿して痰を柔らかくしていきます。

また、痰が絡んで音がするものの、うまく吸引できないことはよくあります。
そういった場合は、聴診器を用いてアセスメントを行ったり、痰の貯留位置を動かすためにハッフィングしたりが必要です。
喀痰吸引は患者さんによっても置かれた環境によっても異なります。
しっかりアセスメントして、患者さんになるべく負担がないように実施するようにしましょう。

喀痰吸引の覚え方

喀痰吸引は医療行為ですが、2012年4月1日に施行された「介護職員等による喀痰吸引等実施のための制度」によって、介護福祉士や介護職員も実施できるようになっています。
実施するためには規定の基本研修や実地研修を受ける必要があります。
また、厚生労働省から「喀痰吸引等指導者マニュアル」も発表されていますので、喀痰吸引をより詳しく覚えたい方は確認してみましょう。

手順やコツを知ってスムーズな吸引を実施しましょう

気管吸引は異物や痰などの気道分泌物を取り除き、患者さんが楽に呼吸できるようにするために行います。
定期的に行うというよりも、患者さんの状態をみて吸引すべきかどうかアセスメントして、適切なタイミングで実施することが大切です。
また、気管吸引は患者さんにとって負担になることもあります。
特に口腔内吸引は嘔気を誘発することもあるため、速やかに行うようにしましょう。
患者さんにとって負担がかからず、少しでも楽に呼吸してもらえるように、手順やコツを理解して、スムーズに吸引を実施しましょう。