リアルジョブ | 介護職・看護職・保育職の求人・転職サイト

リスボン宣言とインフォームド・コンセントの考え方。看護職として知っておきたいこと

リスボン宣言とは、医療を受ける患者さんの権利を明確にした宣言のことです。
患者さんが平等な医療を受ける権利を守るために、世界ではさまざまな宣言が出されています。

本記事では、その中でも「患者の権利に関するリスボン宣言」について解説します。

患者の権利

人は社会で生きる上で、誰もがその人格や価値観が尊重されなくてはいけませんし、尊厳が保たれる権利を持っています。
患者さんも医療を受ける人として、さまざまな権利があります。
患者さんの権利には法律上で定められたものもありますし、法的な拘束力のない宣言もあります。

患者さんに関する権利に目が向けられ、その確立に向けた動きが出たのは1940年代ごろからです。
1947年の「ニュルンベルク綱領」を始め、1948年の「ジュネーブ宣言」、1973年の「患者の権利章典」、1975年には日本で「東京宣言」もありました。
また、後述する「リスボン宣言」は1981年のものです。

医療現場においては、患者さんの権利を尊重し守らなければいけません。
看護師として働く以上、患者さんが持つ権利を理解・把握した上で業務を行うことはとても大切です。

リスボン宣言:11原則

リスボン宣言は1981年にポルトガルのリスボンにて、世界医師会が患者さんの権利に関して宣言したものです。
日本では「患者の権利宣言」と呼ぶこともあります。
この宣言は、序文と11原則で構成されていて、患者さんの持ちうる権利についてより明確にしたという特徴を持ちます。
リスボン宣言をまとめると「医師は自らの良心に基づき、患者さんが利益を得られるように、最善の行動をするべきである」ということです。

以下は11原則の詳細となります。

1. 良質の医療を受ける権利
患者さんは誰からも差別されずに、外部からの干渉を受けない医師から治療を受けられる権利があります。
そして医師は、医療の質の擁護者として責任を担わなければいけません。

2. 選択の自由の権利
患者さんは自分の意志により、医師や病院を選び変更する権利があります。
また、どのような治療段階でも、セカンドオピニオンを求めることができます。

3. 自己決定の権利
患者さんは医師からの説明を受けた上で、ご自身で治療方針を決定できる権利があります。
また、医学研究や医学教育への参加を拒絶する権利もあります。

4. 意識のない患者
何らかの理由により意思を表明できない患者さんの場合、医師は法律上の権限を持つ代理人から、できる限りインフォームド・コンセントを得る必要があります。

5. 法的無能力の患者
患者さんが未成年者または法的無能力であるならば、決定には法律上の権限を持つ代理人の同意が必要です。
ですが、患者さんの能力が許す限り、患者さんは意思決定に関与することが必要です。

6. 患者の意思に反する処置
医師は基本的に患者さんの意思に反する処置や治療は行えません。
しかし、法律上認められている、医の倫理原則に合致する場合は例外として行えます。

7. 情報に対する権利
患者さんは症状や行う治療について、わかりやすく説明を受ける権利があります。
ただし、患者さんの生命または健康に危険をもたらす恐れがある情報については、医師は伝えなくてもよいとされます。

8. 守秘義務に対する権利
医師は患者さんの情報や秘密について、その死後も守らなければなりません。
患者さんの同意または法的に認められる場合にのみ開示できます。

9. 健康教育を受ける権利
患者さんを含むすべての人は、自らの意思で選択できるように健康教育を受ける権利があります。
医師はその教育に積極的に関わる義務があります。

10. 尊厳に対する権利
患者さんの文化や価値観は、医療の場においても尊重されます。
そして、尊厳をできる限り保つため、苦痛の緩和や人間的な終末ケアを受けられる権利があります。

11. 宗教的支援に対する権利
人には信仰の自由があります。
それに伴い、患者さんも精神的・道徳的慰問を受ける・受けないを決定できる権利があります。

リスボン宣言以前の動き

リスボン宣言以前にも、患者さんの権利に関するさまざまな宣言がありました。

ニュルンベルク綱領
人間を被験者とする人体実験に関する倫理原則についてまとめた綱領です。

ジュネーブ宣言
「ヒポクラテスの誓い」を現代化したもので、医師の倫理についての宣言です。

ヘルシンキ宣言
正式名称は「人間を対象とする医学研究の倫理的原則」で、ニュルンベルク綱領を受けて作成・宣言されました。

患者の権利章典
後述する「インフォームド・コンセント」が広く知られるきっかけとなった章典です。

東京宣言
人への拷問、残虐かつ非人間的な取り扱い、拘留および監禁、その他残酷で非人道的な扱い・処罰に関して、医師の指針を宣言したものです。

インフォームド・コンセントとは

医師

インフォームド・コンセントは、医師が患者さんに対して、症状や行う治療について十分に説明し、患者さんが理解・納得してから同意を得て、治療方針を決定することです。
日本医師会では、インフォームド・コンセントをわかりやすく「説明と同意」と表現しています。
1964年のヘルシンキ宣言にて提唱された考え方で、1973年の患者の権利章典にて広く知られるようになりました。

現在では、患者さんの自己決定権を尊重するための考え方として定着しています。
インフォームド・コンセントに基づき、患者さんは十分な説明を受けた上で治療を自身の判断で同意・拒否することができ、同意後もいつでも取り消すことができます。
そのため、患者さんは治療の選択肢を増やすことが可能です。
ただし、インフォームド・コンセントは患者さんの状態により、実施が困難になるケースがあります。
未成年である、意思疎通が難しい、精神疾患がある、救急患者であるといった場合は、家族または代理人の意思で方針を決めることとなります。

患者さんの権利を理解してそれを尊重しましょう

どんな患者さんであっても、その尊厳が守られなければいけません。
患者さんに近い関係にある看護師だからこそ、看護においては患者さんが持つ権利を理解し、自己決定権のサポートや尊厳を守る意識を持つようにしましょう。

患者さんの権利に関する宣言としては、本記事でご紹介した「リスボン宣言」や「患者の権利章典」が有名なものです。
医療機関でもこうした宣言をもとにして、施設のコンセプトとして掲げているところが多くあります。
より良い看護を実践するためにも、ぜひ改めて、各宣言を確認してみてはいかがでしょうか。