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HCU(高度治療室)とICU(集中治療室)で働く看護師の違いを知ろう

病院には一般病棟だけでなく、HCU(高度治療室)やICU(集中治療室)といった特別な治療室があります。
一般病棟ではケアできない、重症または重症化リスクの高い患者さんの治療を行うところです。

本記事では、HCU(高度治療室)とICU(集中治療室)それぞれの概要と違い、そしてHCU(高度治療室)とICU(集中治療室)の看護師になるために必要なことを解説します。

HCU(高度治療室)

HCUは日本語では「高度治療室」または「準集中治療管理室」で、英語では「High Care Unit(ハイケアユニット)」であり、頭文字をまとめた記載がHCUです。
HCUの位置づけとしては、後述するICUと一般病棟の中間です。
一般病棟では看護が難しいものの、ICUに入るほどではないと判断される患者が入ります。
例えば、大きな手術の後に重症化するリスクが高い患者がHCUの対象です。

「一般社団法人日本集中治療医学会」によれば、2021年4月1日時点において、HCU(高度治療室)のベッド数は全国で6,001床とされています。
東京都809床、大阪府549床、埼玉県507床のように、都市部に多く設置されている傾向にあります。

出典:一般社団法人日本集中治療医学会「各都道府県別 ICUおよびICUに準ずる治療室のベッド数

ICU(集中治療室)とは



ICUは「集中治療室」と呼ばれ、「Intensive Care Unit(インテンシブケアユニット)」の頭文字をとった略称です。
ICUは、生命の危機に瀕していて、集中治療が必要と判断される患者を受け入れる病棟です。

集中治療は「日本集中治療医学会」で以下のように定義しています。
「生命の危機に瀕した重症患者を、24時間を通じた濃密な観察のもとに、先進医療技術を駆使して集中的に治療すること」
引用:日本集中治療医学会/集中治療医とは
https://www.jsicm.org/public/intensivist.html

ICUには危機的状況にある患者を集中治療するために、必要となる診療体制や生命維持装置など、高度な診療危機が完備されています。
ICUは7種類に分類されますが、「一般社団法人日本集中治療医学会」によれば、2021年4月1日時点において、ICU全種の病床数は全国で7,015床あるとされています。
最も多い東京の1,093床を筆頭に、HCUと同様に都市部に多く設置されています。

出典:一般社団法人日本集中治療医学会「各都道府県別 ICUおよびICUに準ずる治療室のベッド数

HCU(高度治療室)とICU(集中治療室)の違い

HCU(高度治療室)とICU(集中治療室)は、どちらも一般病棟では対応できない症状の患者の治療を行う点は同じです。
しかし、それぞれの特徴からもわかるように、HCU(高度治療室)とICU(集中治療室)では対象となる患者の重症度は異なります。
ここでは、HCU(高度治療室)とICU(集中治療室)の違いについて5つのポイントから解説します。

施設基準の違い

HCU(高度治療室)とICU(集中治療室)では施設基準が異なり、それぞれの基準を満たすことでHCU(高度治療室)、ICU(集中治療室)であると認められます。
厚生労働省が発表した「基本診療料の施設基準及びその届出に関する手続きの取扱いについて」に基づいた、詳しい施設基準は以下の通りです。

HCUの施設基準
1. 専任の常勤医師が常時1名以上いる
2.ハイケアユニット入院医療管理を行うにふさわしい専用の治療室を一般病床に有している
3. 以下の装置や器具を常時備えている
(ア) 救急蘇生装置(気管内挿管セット、人工呼吸装置等)
(イ) 除細動器
(ウ) 心電計
(エ) 呼吸循環監査装置
4. 看護師が勤務する時間帯は、ハイケアユニット以外での夜勤を併せて行わない
5. 「ハイケアユニット用の重症度、医療・看護必要度に係る評価票」の基準を満たす患者が8割以上いる
6. 「ハイケアユニット用の重症度、医療・看護必要度に係る評価票」の記入は、院内研修を受けたものが行う

ICUの施設基準
1. ICUの経験を5年以上有する医師が2名以上、常時勤務している。
ただし、看護師と連携をとり、患者の治療に支障がない体制を確保しているならば、一時的にICUから離れてもよい。
2. 集中治療を必要とする患者の看護に従事した経験を5年以上有し、集中治療を必要とする看護に係る適切な研修を修了した専任の常勤看護師を週20時間以上配置すること。
ここでいう「適切な研修」とは、講義と演習により集中治療を必要とする患者の看護に必要な専門的な知識と技術を有する看護師の養成を目的とした国または医療関係団体等が主催する600時間以上の研修である。
3. 専任の臨床工学技士が常時、院内に勤務していること。
4. 特定集中治療管理を行うにふさわしい専用の特定集中治療室を有しており、治療室の広さは内法による測定で1床あたり20平方メートル以上であること。
ただし、新生児用のICUにあたっては1床あたり9平方メートル以上であること。
5. 次に掲げる装置及び器具を常時備えていること。
(ア) 救急蘇生装置(気管内挿管セット、人工呼吸装置等)
(イ) 除細動器
(ウ) ペースメーカー
(エ) 心電計
(オ) ポータブルエックス線撮影装置
(カ) 呼吸循環監視装置
6. 新生児用のICUにあたっては、上記のほか下記装置及び器具を常時備えていること。
(ア) 経皮的酸素分圧監視装置又は経皮的動脈血酸素飽和度測定装置
(イ) 酸素濃度測定装置
(ウ) 光線治療器
7. 自家発電装置を有している病院であって、当該病院において電解質定量検査及び血液ガス分析を含む必要な検査が常時実施できること。
8. 原則として、ICU内はバイオクリーンルームであること。
9. ICUの医師は、当該治療室に勤務している時間帯は、当該治療室以外での当直勤務を併せて行わないものとし、当該治療室勤務の看護師は、当該治療室に勤務している 時間帯は、当該治療室以外での夜勤を併せて行わないものとすること。
10. 「特定集中治療室用の重症度、医療・看護必要度に係る評価票」の基準を満たす患者が8割以上いること。
11. 「特定集中治療室用の重症度、医療・看護必要度に係る評価票」の記入は、院内研修を受けたものが行うものであること。
 なお、院内研修は、次に掲げる所定の研修を修了したもの(修了証が交付されているもの)又は評価に習熟したものが行う研修であることが望ましい。
ア 国及び医療関係団体等が主催する研修であること(1日程度)
イ 講義及び演習により、次の項目を行う研修であること
(イ) 重症度、医療・看護必要度の考え方、重症度、医療・看護必要度に係る評価票の構成と評価方法
(ロ) 重症度、医療・看護必要度に係る院内研修の企画・実施・評価方法

出典:厚生労働省「基本診療料の施設基準及びその届出に関する手続きの取扱いについて

入室基準の違い

HCU(高度治療室)とICU(集中治療室)では、患者の入室基準にも違いがあります。
HCU(高度治療室)では、急変リスクがあるため一般病棟でのケアが難しいものの、ICUの対象となるような重症度ではないような患者が入室します。
一方で、ICU(集中治療室)には、いままさに生命の危機状態で、24時間体制にて生命維持が必要とされる重症患者が入室します。

病床数の違い

1つの医療機関ごとに設置されている病床数は、ICU(集中治療室)よりHCU(高度治療室)の方が多いです。
ICU(集中治療室)は、患者の生命維持のために24時間体制で医師や看護師がついている必要があります。
そのため、1つの医療機関で数多く用意することは困難です。
一方、HCU(高度治療室)の患者は急変する可能性はあるものの、24時間体制でつきっきりになる必要はありません。
そのため、ICU(集中治療室)とくらべてリソースを割きやすく、病床数も増やしやすいのです。

対応する患者の違い

HCU(高度治療室)は重症化リスクがある、または大手術後で経過観察が必要であると判断される患者を対象とします。
医療機関によって基準が異なりますが、HCU(高度治療室)には以下のような疾患・症状を持つ患者が入ります。

  • 急性心不全
  • 心筋梗塞
  • くも膜下出血
  • 脳梗塞
  • 心肺蘇生後 など

こうした症状に該当する場合でも、急変リスクが低いと判断される場合は、一般病棟にて治療を進めることもあります。
一方で、ICU(集中治療室)に入るのは以下のような症状・疾患を持つ患者です。

  • 弁疾患
  • 大動脈疾患
  • 肺がん、膵臓がん、肝臓がん
  • 脳腫瘍
  • 敗血症 など

ICU(集中治療室)に入るのは、重篤な急性機能不全の患者が対象であり、内科・外科は問われません。

看護体制の違い

HCU(高度治療室)とICU(集中治療室)では看護体制にも違いがあります。
それぞれの治療室へ配置される看護師の数は定められております。

  • HCU(高度治療室):患者4名に対し看護師1名
  • ICU(集中治療室):患者2名に対して看護師1名

これは、HCU(高度治療室)の方が重度の軽い患者が入室し、ICU(集中治療室)にはより手厚いケアが必要とされるためです。

HCU(高度治療室)とICU(集中治療室)の看護師になるには

HCU(高度治療室)やICU(集中治療室)の看護師は、なるために必要なスキルや資格はあるのでしょうか。
それぞれのケースについて解説します。

HCU(高度治療室)の看護師になるには

看護師であるならば、HCU(高度治療室)の看護師になるのに特別な資格は不要です。
施設によって異なりますが、新人であっても希望すれば配属される可能性はあります。
より深く急性期看護について学びたい、関わっていきたいとお考えならば資格取得を目指してみましょう。
専門看護師は急性・重症患者看護、認定看護師はクリティカルケアがおすすめです。

ICU(集中治療室)の看護師になるには

ICU(集中治療室)の看護師になる場合も特別な資格は不要です。
施設によって基準は異なるものの、一般的に経験の浅い新人看護師が配属されることはほぼありません。
生命の危機に瀕する患者の看護をしますので、少しのミスも許されませんし、実力が問われる環境にあるためです。
ICU(集中治療室)の看護師になるためには、経験を積んで病院側に認められることが必要です。
将来的にICU(集中治療室)で働きたいとお考えならば、経験を積むとともに、以下のような資格の取得も検討してみましょう。

  • 一次救命処置(BLS)
  • 二次心肺蘇生法(ACLS)
  • 病院前外傷教育プログラム(JPTEC)
  • クリティカルケア認定看護師

一般病棟ではできない数多くの経験を積める現場

HCU(高度治療室)やICU(集中治療室)は似ているようでまったく違うものです。
いずれの場合も勤務すれば、数多くの疾患に携わることができるため、一般病棟にはない経験を積むことができますし、将来的なスキルアップにもつながることでしょう。
また、患者さんが回復したときの達成感は、言葉に表せないほどのものです。
HCU(高度治療室)やICU(集中治療室)の看護師になるのに必要な資格はありません。

いずれも一般病棟ではケアできない患者さんの看護をすることになりますので、専門知識はあった方が良いでしょう。
自身のスキルアップのためにも、可能であれば資格取得も目指してみてください。