介護士が覚えておきたい「介護ハラスメント」。対策を知っておこう
「介護ハラスメント」という言葉はしばしばマスメディアにも取り上げられるため、介護に従事していない人にもよく知られています。
本記事では、介護ハラスメントの意味と現状、対策、そして家族へのハラスメントについて解説していきます。
介護ハラスメントの現状
介護ハラスメントは多くの介護職にとって、非常に大きな問題であると同時に身近な問題でもあります。
厚生労働省が出したデータによると、介護ハラスメントを受けたことのある人の割合は、介護老人福祉施設で70.7パーセントに達しており、もっとも低い訪問リハビリテーションでも38.8パーセントとなっています。
また、「この1年間で利用者本人から介護ハラスメントを受けた」とする人の割合は48パーセント~89パーセントであり、決して無視できない人数であることがわかります。
なお、介護ハラスメントの内容としては「精神的暴力」「身体的暴力」が2トップとなっていますが、セクシャルハラスメントなども問題になっています。
出典:厚生労働省「介護現場におけるハラスメントに関する調査研究報告書(2019年3月)」
介護ハラスメントへの対策
介護ハラスメントへの対策としては、
・利用者だけでなく、その家族や事業者側の間で相互の確認を行うこと
・相談しやすい組織体制を作ること
・事業者内で情報を共有すること
・利用者や家族への問題の啓蒙
などが挙げられます。
介護ハラスメントの場合、「相手はご高齢でもうよくわかっていないのだから」「相手ももどかしい思いをしているのだから」「言ってもわからないのだから」仕方がない、と思われがちです。
しかし、どのような状況下であってもハラスメントは決して許されるものではないという認識を、事業者や同僚のみならず、利用者や利用者の家族も持つ必要があります。
また介護ハラスメントの把握は、「受けた本人がどう思うか」だけでなく、客観的な第三者の視点で判断していかなければなりません。
そうでなければ、「私は気にしていないから」「ほかの人は気にしないのに、あなたが気にしすぎているだけ」のような価値観が事業所にはびこり、介護ハラスメントの被害者が孤立する可能性もあります。
必要に応じて警察や法律の専門家に連絡をし、介護ハラスメントに毅然と立ち向かっていく体制作りが求められています。
必要と判断された場合は、契約解除も辞さないスタンスを維持しましょう。
家族へのハラスメントも起こる可能性がある
ここまでは「利用者やその家族から、介護士に対して行われる介護ハラスメント」について取り上げましたが、介護ハラスメントの矛先がご家族に向くこともあります。
つまり、「介護されている人間が、自分を介護している家族に対して介護ハラスメントを働く」といったケースです。
この原因は、介護士に対する介護ハラスメントとほとんど同じです。
ただご家族がターゲットとなった場合、「あの優しかった人がなぜ」「こんなことになる理由が分からない」という混乱も強くなります。
介護される側の変化が介護ハラスメントをもたらしているということをなかなか受け入れられず、驚いたり戸惑ったりすることも多いといえます。
そのような状況におかれているご家族が孤立してしまった場合、介護している側が倒れたりメンタル面で立ち直れないほどの傷を受けたりすることもあります。
そのためケアマネージャーや介護士は、介護をするご家族によく寄り添い、その混乱を受け止めたうえで解決策を提示していくことが求められます。
介護ハラスメントを容認する必要はない
ハラスメントは、どのような環境下でも許されるものではありません。
介護ハラスメントにもまた、同じことがいえます。
「どのような環境下で介護ハラスメントが起きやすいか」「どのようにすれば対策・予防ができるか」を考えることは重要ですが、「介護ハラスメントを容認しない」という強い姿勢を事業者が維持することも重要です。