看護方式の1つ「プライマリーナーシング」とは?看護師と患者のメリットを知っておこう
プライマリーナーシングという看護方式を導入する病院が増えております。
看護師と患者さん、どちらにとってもメリットがありますが、導入にあたって負担が発生してしまうこともありますので、職場環境に合わせて導入を検討することが重要といえます。
本記事では、プライマリーナーシングの概要、役割や目標、仕事内容、看護師と患者さんのメリットやデメリットについてご紹介します。
目次
プライマリーナーシングとは
プライマリーナーシングの「プライマリー」には「最初の、第一の、主要な」といった意味があります。
そのことから、プライマリーナーシングとは、1人の看護師が1人の患者さんを入院から退院まで一貫して受け持つという看護方式を指します。
1970年代にアメリカのミネソタ大学病院にて始まり、現在では日本でも導入する病院が増えてきました。
プライマリーナースが患者さん一人ひとりのことを親身に考えて、質の高い看護を責任を持って提供することが目的です。
新人が担当することはある?
プライマリーナーシングは、看護師1年目の新人であっても担当することがあります。
最初の数ヶ月は基本業務の理解を行いますが、入職から数ヶ月して職場に慣れてきたら、プライマリーナーシングを行うことも少なくありません。
もちろん、最初は1人で患者さんを受け持つのではなく、先輩とペアを組んでプライマリーナーシングについての理解を深めていきます。
アソシエイトナースとの違い
「アソシエイト」には、「補助をする」といった意味があります。
そのため、アソシエイトナースとは、担当看護師をサポートする役割を持つ看護師を指します。
プライマリーナースがシフトから外れているときには、アソシエイトナースが患者さんのケアを行います。
そして、プライマリーナースに対して、患者さんの情報を共有したり必要に応じてアドバイスを行ったりします。
プライマリーナースの役割・仕事内容
ここでは、プライマリーナースの役割や仕事内容についてご紹介します。
プライマリーナースの役割
プライマリーナースの役割は、患者さんの入院から退院までを通し、一貫して看護を行うことです。
必要な看護を提供することはもちろん、信頼関係を築きながら心のケアも行います。
患者さんに親身に寄り添うことで、最善の看護を施すことがプライマリーナースの大きな役割です。
プライマリーナーシングの目標
プライマリーナーシングは、患者さん一人ひとりに合った質の高いケアを提供することが目標です。
1人の看護師が専任担当となることで、患者さんの状態はもちろん、性格なども含めて心身の理解を深めます。
そして、患者さんごとに最善のケアを継続することで、退院をサポートしていきます。
プライマリーナースの仕事内容
プライマリーナースは以下のような仕事を行います。
- 患者さんの看護計画の立案
- 適切なケアの実践
- 看護計画の評価と修正
- 患者さんの退院支援
- 最終評価
プライマリーナーシングと他の看護方式の併用
プライマリーナーシングは以下のような看護方式とも併用されています。
- モジュールナーシング
- パートナーシップナーシング(PNS)
モジュールナーシングとは、複数の看護師でチームを組んで看護を行うチームナーシングと、プライマリーナーシングの特徴を併せ持つ看護方式です。
2つ以上のチームに分け、チーム内でメンバーを数名ずつのモジュール(単位)に分割します。
モジュールごとに1人の患者さんを一貫して担当することから、モジュールナーシングと呼ばれます。
PNSは2名の看護師が対等なパートナーとして協力しあい、患者さんのケアを行う看護方式です。
よりきめ細やかなケアの実践や、協力体制で負担を軽減する目的から、1人の患者さんを入院から退院まで、パートナーが一緒に一貫して受け持つ体制をとっている病院もあります。
プライマリーナーシングのメリット・デメリット
プライマリーナーシングにおけるメリット・デメリットを、看護師と患者さんそれぞれの視点でご紹介します。
看護師のメリット
プライマリーナーシングでは、信頼関係を築きながら、入院から退院まで患者さんをサポートします。
最初から担当できるので、患者の傾向や状況をどの段階に移行しても把握しやすいのがメリットといえます。
また、プライマリーナーシングでは、患者さんのケアに強い責任感が生まれます。
そのため新人にとっては、知識やスキルの習得、そして心の成長につながることもメリットです。
患者のメリット
プライマリーナーシングは患者さんにもメリットがあります。
担当の看護師がいてくれることで、入院中の不安な気持ちを和らげられます。
また、自分に合ったケアを考えて実践してくれるため、より良い看護を受けられます。
看護師のデメリット
プライマリーナーシングは、患者さんを入院から退院まで一貫して担当します。
そのため、例えばハラスメントを感じるような患者さんであると、長い時間を嫌悪を感じながら対応することになります。
また、ハラスメントまでいかなくとも、やや高圧的な患者さんを担当することもあるでしょう。
ひどい場合は、無理をせず上長やまわりの仲間に相談して、担当を変えてもらうのも1つです。
患者のデメリット
プライマリーナーシングでは、看護師の経験や能力によって、受けられるケアに差が出てしまいます。
経験やスキルのある看護師が担当してくれれば問題ありませんが、患者さんが求めている看護内容を受けられないと、不安や不信を感じてしまうかもしれません。
看護師ができることは、まずしっかりと対話をすることです。
患者さんが感じていることや求めていることを、しっかり把握することが重要になります。
プライマリーナースに向いている人
以下のような特徴を持つ方は、プライマリーナースに向いているといえるでしょう。
- しっかりとコミュニケーションを取ることが得意
- 責任感がある
- 柔軟な対応ができる
- やりがいある看護をしたい
プライマリーナーシングでは、患者さんとの信頼関係構築がとても大切です。
そのため、コミュニケーションをじっくりできるタイプの方に向いております。
また、患者さんにあわせた個別のケアを提供する必要があります。
そのため、患者さんに合わせた柔軟な対応ができることはもちろん、患者さんのことを考えて適切な看護計画を立てられる責任感が求められます。
もちろん、やりがいのある看護を実践したい方にも向いています。
プライマリーナーシングを行うと多様なスキルが身に付く
プライマリーナーシングは、患者さんを入院から退院まで一貫して受け持つ看護体制です。
新人のうちは慣れないため戸惑うことも多いかもしれません。
しかし、患者さんとの交流や、患者さんのことを考える個別性の高いケアを実践していくうちに、自然と責任感が生まれてスキル・知識も身につきます。
看護師として幅広い現場経験を積みたいは、経験しておきたい看護の仕事といえるでしょう。