スタンダードプリコーション(標準予防策)の内容を紹介!看護師が知っておきたいポイント
医療機関にはさまざまな疾患を持つ患者が集まりますので、感染症予防を徹底することが大切です。
感染を防ぐためには、看護職に携わる方々も「スタンダードプリコーションの考え方」を知っておくことが重要です。
本記事では、スタンダードプリコーションの概要、スタンダードプリコーションを意識した感染対策、その他の覚えておきたい感染対策についてご紹介します。
目次
スタンダードプリコーションとは
スタンダードプリコーション(標準予防策)とは、厚生労働省によれば以下のように示されています。
「汗を除くすべての血液・体液、分泌物、排泄物、創傷のある皮膚・粘膜は伝播しうる感染性微生物を含んでいる可能性があるという原則に基づいて行われる標準的な予防策」
出典:厚生労働省「労働者の感染管理」
簡単にいえば、人は誰もが伝播する病原体を保有しているという前提のもとで、すべての患者さんに行う標準的な感染予防策のことです。
スタンダードプリコーションの目的
スタンダードプリコーションには、以下のような目的があります。
- 医療従事者を介して、患者さん同士が感染するのを防ぐ
- 医療従事者の感染を防ぐ
- 院内感染や集団感染を防ぐ
- 血液や体液による曝露を予防する
つまり、患者や医療従事者の感染リスクを減少することがスタンダードプリコーションの目的といえます。
出典:厚生労働省「労働者の感染管理」
スタンダードプリコーションを考慮した感染対策
スタンダードプリコーションを考慮した基本の感染対策には、以下のようなものがあります。
手指衛生
手指は細菌やウイルスに汚染されやすい部位であるため、その衛生を保つことはスタンダードプリコーションの基本です。
手指衛生は、手洗いと手指の消毒の2つあります。
手洗いは目に見えて汚れているときに行うもので、石鹸・流水にて洗浄します。
手指消毒は目に見える汚れがない場合に行うもので、アルコールによって消毒します。
個人防護具
個人防護具とは、医療従事者が血液や体液など湿性生体物質から身を守るために着用するもののことです。
個人防護具にはガウン・エプロン、マスク、ゴーグル、フェイスシールド、手袋などがあります。
着用時と着脱時は順番が異なりますので、正しく行うことが大切です。
呼吸器衛生
呼吸器衛生とは、咳やくしゃみなどにより広がる病原体から、患者や周囲の人を守るために行う予防対策のことです。
マスクを着用する、ハンカチやティッシュで口を覆うなどのいわゆる咳エチケットから、こまめな手洗いうがい、呼吸器衛生に関する教育、啓蒙のためのポスター作りなども行います。
周辺の環境管理
患者の周辺の環境管理も大切です。日常的に清掃を行うことで、汚染がないようにして感染予防を行います。
たとえば、患者が手をつくことが多いベッドの柵は目に見えない細菌やウイルスが付着している可能性があります。
そのため、手に触れる可能性がある環境表面を中心に日常的に清掃することが大切です。
患者に使用した器具
湿性生体物質が付着している患者さんに使用した器具の取り扱いにも注意が必要です。
そうした器具は、皮膚や衣服への付着、周囲の環境を汚染しないように配慮して取り扱います。
また、再利用する器具であれば、洗浄・消毒・滅菌など、適切な方法にて再生処理を行います。
安全に再利用できるように、ルールに従って十分な処理を行いましょう。
患者の配置
感染予防のため、患者の配置についてもスタンダードプリコーションを考慮して対策することが大切です。
たとえば、以下のケースでは患者さんは個室入院が推奨されます。
- 何らかの感染症にかかっている
- 感染症にかかりやすい状態である
また、同一の感染症に感染している患者さんの場合、一区画に集めるコホーティングを行うこともあります。
個室入室できないようなケースであっても、コホーティングを実施すれば他の患者さんへの接触を予防できます。
その結果、感染リスク拡大の可能性を低下させられます。
その他に意識したい感染対策
スタンダードプリコーションを意識した基本の感染対策以外にも、看護職が知っておきたい感染対策をご紹介します。
感染経路別の対策
感染経路ごとに対策を行うことで、感染拡大を防げます。
空気感染
麻疹や水痘などの患者さんは、陰圧室で管理を行います。
入室時にはN95マスクを着用して空気感染リスクを抑えます。
飛沫感染
インフルエンザ等の患者さんは、個室または集団隔離(各患者さんは1m以上離す)にて管理を行います。
入室時にはサージカルマスクを着用します。
接触感染
ウイルス出血熱、RSウイルスなど接触感染の可能性がある場合、原則として患者さんは個室管理します。
個室管理が困難である場合はコホーティングや集団隔離を行います。
ディスポーザブルの手袋を着用し、手指消毒を徹底します。
看護職として働く方々の感染対策
看護職は、業務を通して患者と密接に接触する機会が多い職種であるため、病原体の媒介者になる恐れが高いです。
そのため、日頃からスタンダードプリコーションを徹底するとともに、自身の健康管理を徹底することが大切です。
病院勤務の場合、「休みにくい」と感じることもあるかもしれませんが、感染症の症状がある場合は、早めに受診して療養することが大切です。
必要なときにしっかり休むことは、患者や同僚の安全につながります。
スタンダードプリコーションを理解して看護職の仕事に励もう
スタンダードプリコーションは、すべての患者に対して行う標準的な感染予防策です。
スタンダードプリコーションの目的を理解して、仕事に反映していきましょう。
それが患者だけでなく、同僚やご自身の健康を守ることにもつながります。