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ノーリフティングケアの目的とは!?介護現場が期待すること

超高齢化社会を迎えた日本の介護現場で、「ノーリフティングケア」という考え方が注目されています。
本記事ではノーリフティングケアとはどのようなものなのか、その目的や介護現場で期待されていることについて解説します。

ノーリフティングケアとは

ノーリフティングケアとは、医療・介護において患者さんの介助作業を、人力に頼るのではなく、福祉器具によって行うことです。
電動リフトなどの福祉器具を用いれば、要介護者にとっては安全に介護を受けられますし、介護者側は腰痛などのリスクが軽減します。
つまりノーリフティングケアは、介護者と利用者どちらにも優しい介護といえます。

背景

ノーリフティングケアはオーストラリア発信のケアメソッドです。
腰痛による看護師の離職者増加が深刻化し、その対策として1998年に「ノーリフト®」がスタートしたことが、ノーリフティングケアの始まりです。

日本におけるノーリフティングケア

超高齢化社会を迎えている日本でも、看護師・介護者の腰痛問題は深刻化しています。
「全介助の必要な対象者には、リフト等を積極的に使用することとし、原則として人力による人の抱上げは行わせないこと。」と厚生労働省の資料でも明記されています。
そのため、病院や介護施設で福祉器具を有効に活用する、ノーリフティングケアの導入が進んでいます。

出典:厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針

ノーリフティングケアで使用する福祉器具

ノーリフティングケアでは、必要な介助に応じてさまざまな福祉器具が用いられています。
以下で、いくつかご紹介します。

介助グローブ
滑りやすい素材でできているため、臀部などにも簡単に手を差し込める

スライディングボード・シート
滑りやすい素材で、要介護者の移乗を少ない力でスムーズに行える

電動床走行式リフト
要介護者をリフトで吊り上げ、キャスターで電動走行して移動できる

スタンディングマシーン
要介護者を吊り上げることで、座位・立位の動きをサポートするとともに、キャスター移動もできる

入浴用ストレッチャー
要介護者が寝たままで入浴できるストレッチャー

他にも、介護ロボットなど福祉器具にはさまざまなものがあります。
こうした福祉器具を活用することは、ノーリフティングケアにつながることはもちろん、介護者の人手不足を補うことにもつながります。
人力では2~3人必要だった介助も、1~2人でできるようになるためです。
また、要介護者にとっては、スムーズな介助を受けられるようになり、ケア全体の質向上や満足度向上につながります。

ノーリフティングケアで期待されること

介助の椅子

ノーリフティングケアの導入で期待されることは数多くあります。
以下でいくつか解説します。

人手不足解消や業務効率向上

効果的に福祉器具を活用すれば、介助業務は格段に効率化されて人手不足も解消されます。
人力よりもスムーズに介助できるため、時間が短縮されるためです。
また、介護者の身体への負担が軽減されることで、職員も定着しやすくなります。
そういった意味でも、人手不足解消になりますし、経験を積んだ職員が増えることでより業務が効率化される可能性があります。

介助の安全性が高まる

人力による介助は、利用者にとってさまざまな危険があります。
移乗の際に落下してしまったり、皮膚が擦れて怪我をしたりなどの事故は少なくありません。
また、力任せに介助されると、利用者側は身体の痛みだけでなく、精神的な不安を感じるものです。
福祉器具を用いれば、無理なく介助を進められるようになり、より利用者の安全を配慮できるようになります。

自立につながる可能性がある

「機械よりも人の手の方が温かい」として、人力での介助を優先するような考え方を持つ人もいます。
しかし実際の現場では、人力による移乗は介護者だけでなく、利用者にとっても負担があるものです。
利用者によっては、介助時に全身が緊張してしまい自然な動きができなくなることもあるでしょう。

これは、利用者の将来的な自立の機会を奪うことにもつながりかねません。
福祉器具、たとえばリフトによって身体を起こせば、人力とは視界がまったく変わります。
身体がこわばることなく、自然な動きをイメージしやすくなることでしょう。
そうした介助経験を積み重ねることは、利用者の自立意識を高めるきっかけになるかもしれません。

ノーリフティングケアの導入は今後さらに必須になってくる

介護者は、利用者が快適に生活できるようにサポートするのが仕事です。
それなのに、業務を通して自分自身が腰痛で苦しんでしまっては本末転倒といえます。
質の高い介護を実践するためには、介護者側も快適に業務を行えるように、ノーリフティングケアの導入は重要です。
そうした取り組みは業務効率を良くするとともに、離職者を減らすことができ、結果的に介護の質を高めて利用者の満足度向上につながることでしょう。