脳室ドレナージのクランプ開放と閉鎖。看護師の役割を解説
脳室ドレナージは正しい知識を持って管理しなければ、患者さんの命を脅かしてしまいます。
本記事では、脳室ドレナージについての基本、クランプを開放・閉鎖する順番や注意点などについて解説していきます。
目次
ドレナージとは
ドレナージとは、ドレーンを用いて溜まってしまった脳脊髄液や血液を体外に排出する処置のことです。
以下のような場合に、脳室ドレナージを行います。
- 急性水頭症:頭蓋内圧を下げ、意識状態を回復させるために行う
- 脳室内出血:貯留した血液や髄液を排出するために行う
- 閉塞性水頭症:脳腫瘍によって閉塞性水頭症が引き起こされている場合、腫瘍摘出前にドレナージを行う
脳室ドレナージの仕組み
ここでは、脳室ドレナージの仕組みについて解説します。
閉鎖式ドレーン
閉鎖式ドレーンは「クローズドドレーン」ともいわれ、ドレナージバッグを頭よりも下にすることで、その落差を利用して脳脊髄液や血液を体外に排出する方法です。
落差を利用するため、そのまま放置すると髄液が体外に排出し続けてしまいます。
そのため、適切な管理が必要です。
開放式ドレーン
開放式ドレーンは「オープンドレーン」とも呼ばれる方法です。
体内の圧とドレーンが持つ毛細管現象により、脳脊髄液や血液を体外に排出させます。
頭蓋内は圧が一定に保たれ、髄液が常に生成されていることを利用した方法です。
ただし、手術で骨に穴を開けてしまうと、大気圧と頭蓋内圧が同じになってしまうため、ドレナージがうまくいかない場合があります。
サイフォンチャンバー式ドレナージ回路
サイフォンチャンバー式ドレナージ回路は、サイフォンの原理を利用した、閉鎖式と開放式それぞれの特徴を併せ持つドレナージです。
チャンバーの高さを変えることで流出圧を調節し、ドレーンを挿入した部分を陽圧にすることで脳脊髄液や血液を排出します。
この方法であれば、圧を保ちつつ必要以上に溜まった髄液等を適切に排出できます。
ただし、圧の設定は厳密に行われなければいけないなど、注意すべき点があります。
脳室ドレナージの開放と閉鎖
脳室ドレナージでは、クランプの開放と閉鎖を適切に行わないとオーバードレナージが発生します。
オーバードレナージが発生すると、脳出血や意識障害などが引き起こされることがあるため注意が必要です。
クランプの位置と役割
脳室ドレナージ回路のクランプは、以下4つの位置にあります。
- フィルタークランプ:回路上部のドリップチャンバーの位置にあり、基本的には開放しておく
- 患者側ロールクランプ:脳室ドレナージの接続部の近くにあり、閉じることで髄液の流出を止められる
- 排液側ロールクランプ:ドリップチャンバー下部の排液バッグ接続部近くにあり、閉じることで排液が排液バッグへと流れるのを止められる。基本的には開放しておく
- フィルタークランプ:排液バッグの位置にあり、バッグ内が陽圧になるのを防ぐ。移動時や排液量の測定時には閉鎖するが、その後は陽圧にならないように速やかに開放する
ドレーン管理で気をつける点
ドレーン管理では以下の点に注意しましょう。
注意点①:クランプの開閉を確認する
脳室ドレナージでは基本的にクランプは開放しています。
しかし、患者さんのケアや検査、移動をする場合にはクランプを閉鎖しなければなりません。
たとえば、患者さんの痰を吸引する際はクランプを閉鎖します。
閉鎖し忘れると、患者さんが咳き込んだ影響で頭蓋内圧が急上昇した際に、髄液が流出してフィルターが汚染されてしまいます。
また、患者さんのケア等が終わったあとは速やかにクランプを開放しなければなりません。
閉鎖したままにするとオーバードレナージが発生し、重篤な症状に至ることがあるためです。
注意点②:フィルターが濡れないようにする
チャンバー内の排液でフィルターが濡れないようにすることも大切です。
ドリップチャンバーのフィルターが髄液で濡れてしまうと、内圧が変化してオーバードレナージが発生します。
また、フィルターがクランプで潰されてしまうと、やはりオーバードレナージが発生するため注意が必要です。
注意点③:チューブ抜去事故を防ぐ
ドレーンチューブの抜去事故にも注意が必要です。
患者さんの移動や体位変換等を行う際、チューブを引っ張ってしまい抜けることがあります。
そのため、チューブはループをつくってテープで固定するなどして、抜去しにくい状態にしなければなりません。
また、患者さんに意識障害がある、精神的に不安定になっているといったケースではチューブの自己抜去に注意しなければなりません。
患者さんの状態に応じて、両手にミトンを装着するなどして、自己抜去されないようにします。
注意点④:開閉時は順番を守る
ドレーン管理の基本として、クランプの開閉は必ず順番を守らなければなりません。
開放時は以下の手順で行います。
- 大気圧と同等にするため、上部フィルタークランプを開放する
- 排液バッグの内圧を開放するため、下部フィルタークランプを開放する
- 排液の流れを開放するため、排液側ロールクランプを開放する
- 脳髄液の流れを開放するため、患者側ロールクランプを開放する
閉鎖時は開放時と逆の流れで行います。
- 脳髄液の流れを閉鎖するため、患者側ロールクランプを閉鎖する
- 排液の流れを閉鎖するため、排液側ロールクランプを閉鎖する
- 排液バッグの内圧を閉鎖するため、下部フィルタークランプを閉鎖する
- 大気圧と同等にするため、上部フィルタークランプを閉鎖する
責任感を持って脳室ドレナージの管理を行いましょう
脳室ドレナージは圧をコントロールすることで適切な排液を行うものです。
開閉手順やドレーン管理を適切に行わないと、オーバードレナージや抜去事故などが引き起こされます。
また、クランプ開放し忘れはうっかりであったとしても、患者さんの命を脅かすものであることを意識して、対応することが大切です。