認知症ケアで大切なことは自尊心に配慮すること。事故やトラブルを防ごう
超高齢化社会の日本では、認知症ケアは看護師にとってとても大切な業務です。
認知症の方の事故やトラブルも増加傾向にあるため、それを防ぐための適切なケアを提供することが大切です。
本記事では、認知症ケアの基本的な考え方、起こりやすい事故やトラブル、認知症ケアの具体例とポイントについてご紹介します。
目次
認知症の基本
認知症になると記憶障害などの影響から、物忘れやできないことが増えてしまいます。
しかし、強く責め立てるなどの不適切な対応をすると、認知症が悪化することも少なくありません。
認知症の人もケアする側も健やかに過ごせるように、ケアにおける基本的な考え方をおさえておきましょう。
本人のペースに合わせる
認知症の人のペースに合わせて見守ることがまずは大切です。
たとえば着替えを全部やってあげるのではなく、できることはなるべくやってもらいます。
たとえゆっくりであっても見守ってあげて、本人のペースに任せることが大切です。
自尊心に配慮する
認知症になると物忘れが増えてしまいますが、自尊心が失われるわけではありません。
認知症ケアを行う場合、本人の気持ちに寄り添って配慮することが大切です。
たとえば、何か失敗をしたとしても強い語調で注意するのではなく、まずは本人の言葉に耳を傾けてみましょう。
わかりやすく話す
認知症の高齢者は耳が遠くなるだけでなく、言葉をすぐに理解できなくなることもあります。
そのため、多くのことを一度に伝えても理解できずに混乱してしまいます。
また、警戒心が強い方もいますので、話しかける場合は視界にゆっくり入って大きな声で簡潔に伝えることが大切です。
スキンシップを大切にする
スキンシップを取ることも認知症ケアでは良いことです。
手を握る、背中をさするなどの触れ合いは心が温まりますし、実際に幸せホルモンの分泌が促進されるともいわれています。
コミュニケーションとして適切かつ相手が嫌がらない範囲でスキンシップを取ってみましょう。
環境を急に変えない
認知症の方は環境が大きく変わると不安な気持ちになりやすいです。
たとえば、病院に入院する場合、不安のため眠れない方も多くいます。
自宅とは環境が大きく変化する病院へ移る場合は、見慣れた置物や大切にしているアイテムなどをご家族に用意してもらうと心の平穏を保ちやすいです。
認知症による事故・トラブル
認知症により認知機能が低下することで、さまざまな事故やトラブルを引き起こすこともあります。
転倒やふらつき
認知症ケアの現場で多い事故は、転倒やふらつきなどによる怪我です。
認知症が進行すると平衡感覚に影響が出ることがあります。
普通に立って歩ける筋力があったとしても、バランスを崩して転んでしまうことがあるのです。
また、身体機能を正しく認知できず、自力歩行ができないにも関わらず「歩ける」と思って立ち上がり、そのまま転倒するというケースもあります。
怪我や骨折などのリスクがありますので、認知症の方から目を離さないことが大切です。
とっさの行動によるトラブル
認知症の人はふいに不安に襲われたり混乱したりして、急に動き出すことがあります。
たとえば、「誰かに襲われる」という妄想をしてしまい、その場から逃げ出そうとして戸やタンスにぶつかって怪我をする、転倒するということがあります。
外でも赤信号なのに急に飛び出してしまうこともあります。
また、他者へ暴力を振るったり暴言を吐いたりするというのも認知症の人ではよくあるため注意が必要です。
徘徊
認知症ケアを受けている人で多いのが徘徊です。「ここは自分の家ではない」と急に思いたち、外に飛び出してしまいそのまま迷子になることがあります。
近所で徘徊しているだけなら問題ありませんが、健康な方の場合は遠方まで行ってしまい、そのまま行方不明になるケースもあるため注意が必要です。
認知症ケアのポイント・具体例
認知症ケアは、自尊心に配慮しつつ見守ることが大切です。
ここでは具体例を出しつつ、認知症ケアのポイントを解説します。
「お昼はまだか?」と何度も聞く
少し待ってくださいと伝える
待ってもらっているうちに忘れてもらうことでトラブルを回避できます。
軽いおやつなどを食べてもらう
もしかしたら、小腹が空いている可能性もあるため、お菓子や果物などで欲求を満たすのも良い方法です。
強く否定しない
「さっき出しました」などと否定すると傷ついたり暴言を言ったりすることがあります。強く否定するのは控えましょう。
「財布がない、盗まれた」と言っている
話を聞いてみる
まずは認知症の人の気持ちに寄り添って話を聞いてみましょう。
一緒に探してみる
もし盗まれたり無くしたりしていなくても、一緒に探す手伝いをしてみましょう。
自分で見つけられるようにする
財布の所在がわかっているようであれば、本人が見つけやすい場所にそっと置いておくと良いでしょう。
トイレを失敗してしまった
責めることはしない
本人も落ち込んでいるはずなので、強く責めることはやめましょう。
着替えを促す
なるべく普通に、「新しい方が気持ちも良いですよ」と着替えを促してあげましょう。
トイレのタイミングを見計らう
トイレのタイミングを見計らい、トイレに誘って付き添ってあげるのも良いでしょう。
認知症ケアによって周辺症状(BPSD)の改善が期待できる
認知症の周辺症状(BPSD)は、周囲の接し方によって緩和される可能性があるものです。
たとえば、本人の気持ちに寄り添ったコミュニケーションを心がければ、不安や混乱、ストレスなどをある程度取り除けることでしょう。
「高齢だから怒りっぽい、忘れやすい」と決めつけたり拒絶したりするのではなく、まずは本人に寄り添い、基本に則って認知症ケアをすることが大切です。
認知症ケアは気持ちに寄り添うことが重要
超高齢化社会である日本において、認知症ケアは介護職の重要な仕事です。
記憶力や認知力が低下しているものの、ご本人の個性や尊厳は失われません。
だからこそ、認知症ケアでは相手の気持ちに寄り添う姿勢が大切です。
頭ごなしに注意するのではなく、まずは話を聞いてみると良いでしょう。