酸素療法の概要や種類を解説。看護師の役割とは!?
看護師として働いていれば、酸素療法を行うことは少なくありません。
「改めて酸素療法の種類を知りたい」「酸素療法における看護師の役割を知りたい」という方も多いことでしょう。
本記事では、酸素療法の特徴、酸素療法の種類と看護師の役割についてご紹介します。
目次
酸素療法とは
酸素療法とは、患者さんの体内の酸素濃度を適切にするため、カニューレやマスクなどにより酸素を投与する治療法のことです。
その目的は、体内の酸素濃度が低下している患者さんに対して酸素を補うことにあります。
酸素はすべての細胞に必要なものであり、生命活動になくてはならないものです。
体内の酸素濃度が低下した状態が続くと、各臓器の機能低下、心不全、脳血管障害などが引き起こされやすくなります。
酸素療法を行うことで、細胞組織に酸素をしっかり供給して低酸素状態を解消し、組織の機能維持を図ります。
酸素療法の種類
酸素療法には、さまざまな種類があります。
酸素の供給量によって、大きく低流量システムと高流量システムの2つに分類でき、さらに方法ごとにいくつか分類されます。
呼気時間を1秒とした場合、成人は1秒間に500mlの空気を吸います。
常に500mlの空気を吸うためには30L/分です。これを目安として、少ない場合は低流量、多い場合は高流量としています。
以下で、それぞれの酸素療法の種類についてご紹介します。
低流量システム
成人が行う1回の呼気量よりも少ない量の酸素を供給する酸素療法を、低流量システムと呼びます。
不足している酸素については、周囲の呼吸によって補われますので、吸入する酸素濃度は患者さんの呼吸によって異なります。
低流量システムには以下のような種類があります。
- 鼻カニューレ:鼻腔から酸素を吸入する
- 酸素マスク:鼻と口を覆うマスクで酸素を吸入する
- リザーバーマスク:酸素マスクにリザーバーバッグがついているもの
高流量システム
高流量システムは、成人が1回に行う呼気量よりも多い量の酸素を供給する方法です。
酸素と空気を混ぜたガスを作り、30L/分以上の酸素を投与します。
すべての空気をマスクから投与できるシステムであり、吸入できる酸素濃度は、低流量システムのように患者さんの呼吸に左右されることはありません。
そのため、安定した濃度の酸素供給が必要とされる患者さんに対して行います。
高流量システムには以下の種類があります。
- ベンチュリーマスク:アダプターと酸素流量計で調節可能なマスクタイプのもの
- ハイフロー経鼻カニューレ:鼻カニューレを使用するもの
酸素療法における看護師の役割
全身状態や吸入器の状態を観察する
酸素療法を行う際には、患者さんの全身状態を観察しなければなりません。
何らかの異常があれば、それを早期に発見して対処しなければならないためです。
また、酸素吸入のための機器が正常に作動しているかどうかも確認します。
全身状態の観察項目は以下の通りです。
- 呼吸回数やリズム
- 呼吸音
- バイタルサイン
- 意識レベル
- チアノーゼがないか
- 喘息や咳嗽(がいそう)はないか
これらを定期的に確認し、異常があればすぐに適切な対処を行います。
酸素吸入機の状態の観察項目は以下の通りです。
- 酸素吸入機の不具合の有無
- 鼻カニューレやマスク、リザーバーバッグは正しく装着できているか
- 酸素の供給量や濃度に間違いはないか
- 酸素吸入のチューブが曲がっていないか、閉塞していないか
- 酸素吸入機の近くに火気または引火性のものは存在しないか
正しく酸素を供給するためにこれらのことを必ずチェックします。
また、酸素は支燃性ガスであるため、火気は近づけないようにしましょう。
患者さんへの精神的なケア
人間にとって、呼吸は生きるうえで必要不可欠なものです。
患者さんは、呼吸困難を経験したため酸素療法を行います。
息ができない、息苦しい……こうした体験は患者さんにとって死を連想させるような恐ろしいものです。
また、酸素療法では鼻に管を通したりマスクをしたりするため、不快感や閉塞感などがあり、患者さんにとっては大きなストレスになるものです。
このように、さまざまな恐怖心やストレスを抱えている患者さんに少しでも安心していただけるように、精神的なケアやサポートを行います。
患者さんに対して、酸素療法を行う必要性を丁寧に説明することはもちろん、酸素吸入に関して苦痛なことがないかを確認しましょう。
患者さんの状態に合わせた正しい酸素療法を行いましょう
酸素療法は体内の酸素濃度が低下した患者さんに対して行う酸素吸入です。
酸素療法には、吸入する酸素量に応じて低流量システムと高流量システムがあり、使用する器具の種類もいくつかあります。
医師の指示のもと、患者さんの状態にあった酸素療法を行い、適切に管理・観察することが大切です。
また、酸素療法を受けている患者さんはさまざまなストレスや恐怖心、不安などを抱えています。
患者さんに寄り添い、少しでも安心して治療を受けていただけるように配慮しましょう。