1人の利用者様の生活をサポートしていこうとするとき、その人に非常に多くの職業・サービスが関わることになります。
看護・介護・リハビリテーションなど、さまざまな分野の人がその人に働きかけることになります。

本記事では、そのなかから「訪問リハビリ」を取り上げて、その意味とポイント、メニューの決め方や具体的な流れについて紹介していきます。

訪問リハビリの意味とそのポイント

「訪問リハビリ（訪問リハビリテーションとも。ここでは特筆すべき事情がない限りは、以下では『訪問リハビリ』の表現に統一する）」とは、利用者様の自宅を訪れてリハビリテーションを行うサービスを指します。

似た言葉として「訪問介護」「訪問看護」があります。
いずれも「訪問する」という点では訪問リハビリと同じですが、訪問介護の場合は日常生活のサポートやお世話を行うことを目的とするものであり、訪問看護とは医療的なケアを含むケアを行うことを目的とするものです。
そのため、この2つは訪問リハビリとは区別されます。

訪問リハビリを行うのは、主に言語聴覚士や作業療法士、理学療法士などです。
彼らは心身機能の維持や向上を目的として家に訪れてさまざまなリハビリテーションを行います。
ちなみにこれも、介護保険の対象となります。

訪問リハビリでは、歩行などの機能訓練を行ったり、食事などの生活動作を訓練したり、言葉や飲み込みに関する訓練を行ったりします。
また、必要な場合は福祉用具の貸し出しのアドバイスを行ったり、同居のご家族に対して接し方のアドバイスを行ったりします。

訪問リハビリのメニューの決め方

訪問リハビリは、利用者様の意思だけで無制限にすべてのサービスが使い放題になるものではありません。
まずは要介護・要支援者様やそのご家族から訪問リハビリを受けたいという希望を聞いた担当ケアマネージャーが訪問リハビリ事業所を決めることから始まります。
その後で、さらにその要介護・要支援者様の主治医と連携し、リハビリの指示書などの書類を受けることになります。
ここまで行うと、訪問リハビリ事業所と契約することができるようになります。

ただ、その後でもすぐに訪問リハビリを受けられるわけではありません。
この後、訪問リハビリ事業所側の医師が主治医の見解を元に訪問リハビリの計画書を作る段階が挟まれます。
この訪問リハビリ事業者側の医師によるリハビリ計画書をケアマネージャーが受け取ったのち、さらにこれをケアプランのなかに組み込んでいく作業が必要となります。
ここまで行って初めて、訪問リハビリの利用が可能になるのです。

訪問リハビリのケアプランを決める主体となるのは、ケアマネージャーと主治医、そして訪問リハビリ事業所の医師です。
しかし現場で働く言語聴覚士・作業療法士・理学療法士とも関わりのあることですから、メニュー決定までの流れは押さえておくべきです。
また原則として訪問系のサービス（訪問リハビリ･訪問看護・訪問介護）は同日同時間に利用することはできませんが、特例として認められた場合は一緒に行うこともできるとされています。
そのため、介護職の人でもこの訪問リハビリの流れを押さえておくのに越したことはありません。

訪問リハビリの流れ

上記では「訪問リハビリを利用するまでの流れ」について見てきましたが、ここからは「訪問リハビリを受ける日の流れ」について解説していきます。

①その日の状態を確認する

「状態確認」は、訪問リハビリに限らずすべての仕事の基本です。
利用者様の当日の健康状態を確認します。

②リハビリを行う

訪問リハビリのプランに従って、その利用者様に必要なリハビリを行います。
この内容は人によって異なります。
関節機能を維持・向上するためのリハビリを行うこともありますし、日常生活を送るために必要な作業のためのリハビリを行うこともあります。
また、嚥下機能や言語機能の訓練を行うこともあります。

③アドバイスをする

現在の状況をより詳しく把握するための問題点の洗い出しや、状態の確認を行います。
また、ご家族からの質問や心配事の相談を受けることもあります。
今後のリハビリの方向性などもこのときに伝えると、ご家族やご利用者様の不安も軽減されることでしょう。
なお「尋ねられたが即答できないことだった」「自分の職域ではないことだった」という場合は、軽率に返事をすることは避け、持ち帰って話し合う旨を伝えてください。

④リハビリ終了

リハビリの全工程が終了後、事業所に帰ります。

訪問リハビリという選択肢

利用者様の機能を向上・維持することは、ご自身の自信につながるだけでなく、ご家族の負担を軽くすることにもつながります。
このようなことを目的として行われるようになった訪問リハビリという選択肢は、介護・看護の業界にいる人にとっても非常に重要なものだといえるでしょう。
直接的に「リハビリテーション」として関わることがなかったとしても、基礎的なところは押さえておく必要があります。