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介護業界に求められる心理的安全性。離職防止にどう役立つ?

介護職は、しばしばその離職率の高さが論じられる職業です。
離職事由が一つではない以上「これを心掛けたら人は絶対に仕事を辞めない」と断言することはできません。
本記事では、精神的な負荷が原因で仕事を辞めていく人への対策として、「心理的安全性」というキーワードを中心に紹介していきます。

「心理的安全性」とはどんな意味か

「心理的安全性」とは、「組織に属している人間が、自分自身の感情をその組織に属する人全員に対して、安心して発露できる状態」を指す言葉です。
この概念は比較的新しいもので、この世に誕生してから25年ほども経っていません。

心理的安全性が高い職場の場合は生産性がアップするとされていて、離職率が低く、モチベーションが保ちやすいとされています。
スタッフが安心して働けるようになるだけでなく、組織のレベルアップにも繋がるというわけです。
そのため管理職に就いている人間は、組織全体の心理的安全性の向上およびその維持に努めなければなりません。

「ぬるま湯の状態」との違いとは

心理的安全性が高い職場では、スタッフは自由に自分の意見を人に話すことができますし、また自分の弱点を告白してそれをただしく補ってもらうこともできます。
このような状況は、ともすれば「ぬるま湯のような状態と何が違うのか」という議論を呼び起こします。

しかし「心理的安全性の高さ」と「ぬるま湯に浸った状態」はイコールではありません。
ぬるま湯のような状態の職場では人間関係の良さを重要視すぎるあまり、改善すべき点を口に出せなかったり、自分たちの所属する組織以外の人に負担をかけてしまったりしてしまいがちです。

そのため何か問題が起きたとしても、ただしくない方向で「かばいあい」ときには「隠ぺい工作」が行われてしまいがちです。
しかし心理的安全性の高い組織の場合は、問題を全員で共有し、その問題を解決するためにはどのようにしたらいいのかを積極的に意見交換をしていける環境となります。
問題が起きたときにその問題を起こした「個人」だけを追い詰めるのではなく、全員で建設的な意見を出して二度とその問題が起きないように前向きな議論ができるわけです。

このような点で、「ぬるま湯のような環境」と「心理的安全性高い環境」は大きく異なります。

心理的安全性は離職対策になるか

心理的安全性の概要を把握したところで、これが介護の現場においてどのように作用するかについて見ていきましょう。
厚生労働省が発表している「介護労働の現状」では、「介護の仕事をやめた理由」が問われています。
このときの1位になっているのは、ライフスタイルの変化・ライフイベントの発生や年収の低さではなく、「職場の人間関係によるもの」です。
常に人手不足に悩まされている介護職の現場ですが、その人手不足を生み出しているのは職場の人間関係なのです。

「分からないことがあるけれど、先輩は忙しそうで聞けない」
「介護職も10年目だから、分からないことを聞いたら『こんなことも分からないの?』と無知だと思われそうで質問できない」
「苦手としている作業があることを打ち明けたら、無能だと思われそうで言えない」
「セクハラ・モラハラ行為を受けているが、これを打ち明けたらネガティブだと評価されそうで話せない」
などのように思い詰めて、最終的に辞職という手段を選ぶ人も多いと思われます。

介護の業界は、さまざまな年齢・立場・考えの人が入り乱れています。
そしてそれぞれがそれぞれの理想と信念、希望を持っています。
そのため、「まったく何の悩みもない」という状況のなかで働こうとすることは現実的ではありません。
しかし分からないことを聞ける環境であったり、軽んじられることのない人間関係であったり、抱いた悩みやトラブルを共有できる職場であったりすれば、少なくとも、「人に言えないこと」を理由として職を離れる人は非常に少なくなるはずです。

心理的安全性の保たれる職場を作ることは、一朝一夕ではできません。

  • 人の言葉を否定せず
  • 経験や立場に依って下の人を押さえつけようとせず
  • 新しいチャレンジを(少なくとも一度は)肯定的に受け止め
  • より良い環境を作るためにはどうすればいいかを考えていく

上記の点を一人ひとりが心掛ければ、きっとだれもが安心して働ける職場になるはずです。
そしてそれには、すでに上で述べた通り、管理職の立場にある人の積極的かつ迅速な働きかけが必要だといえます。

出典:厚生労働省「介護労働の現状

話しやすい職場を作ることの意味

離職率が低い職場は、人手不足に悩まされる可能性が低くなります。
また一人ひとりのスタッフが経験を積みやすくなるため、技術・知識の確かなスタッフが育ちやすくなります。
心理的安全性の高い職場を作ることで、そこに働く人にとっても、彼らを雇う施設にとっても、そして彼らのサポートを受ける利用者様にとっても、望ましい施設が仕上がるのです。