厚生労働省発表:介護士の労働災害発生状況と防止策
介護士の仕事は肉体的・精神的負担が大きいものですが、近年は特に「労働災害(以下『労災』とします)」が問題になってきています。
労災は、本人だけでなく職場の混乱も引き起こすものです。
ここでは介護の現場で起きる「労災」に注目し、その発生状況や防止策について取り上げていきます。
目次
介護業界の労災の発生状況
介護業界の労災の発生状況は、近年増加傾向にあります。
少し古いデータではありますが、平成24年から平成27年にかけて、介護現場での労災の数は右肩上がりに上昇していっています。
労災のなかでもっとも多いのは(年によって多少の違いはありますが)、何かをしたときの反動や、無理な動きによるものです。
またそれとほぼ同列で1位についているのが「転倒」であり、この2つの順位は年によって入れ替わっています。
ほかには交通事故や転落事故も報告されていますが、これは割合としてはそれほど多くありません。
「年齢を重ねた人でも活躍できる職場が、介護業界である」ということで、けがをするのもご年配の職員が多いと思う人もいるかもしれません。
しかし実際には、介護職の経験がまだ浅い職員の方が被災しています。
経験年数が3年未満の被災者が全体の40パーセント以上を占めており、経験のなさがそのまま労災に繋がっているという実態が明らかになっています。
介護業界における労災の防止対策
労災を完全に防ぐことは難しいのですが、それでも、対策をきちんと打つことでリスクを下げることができます。
そのための方法として、以下の3つのやり方が挙げられます。
・4S活動
・KY活動
・「見える化」
一つずつ見ていきましょう。
4S活動
「整頓」「整理」「清潔」「清掃」の4つの頭文字をとったものです。
きちんと片付けられたところでは物にぶつかって転倒する可能性が低くなりますし、きちんと清掃されたところでは足を滑らせて体をひねるなどのリスクを最小限に抑えられます。
また4S活動によって、作業を効率化することもできます。
KY活動
「危険(K)を予知(Y)すること」をいいます。
危ない場所や危ない行動に対して、指差しをして「今から危険な作業をする」「正しい姿勢になっているかを確認する」という手順を踏むことで、労災を起こしにくくするのです。
見える化
危ない場所にステッカーなどを貼り、危険であることを周知します。
これによって、意識的に気を付けるようになり、事故のリスクを下げることができます。
メンタルヘルス対策の推進
「労災」という言葉を聞くと、「体の問題」と感じる人も多いでしょう。
しかし、「心のケア」も非常に重要です。
介護職は常に人に接する仕事であるため、本人の心が健康でなければ勤め続けることは難しくなります。
そのため、労働者が50人を超える事業所では、医師や保健師によるストレスチェックを労働者に受けさせることを義務としています。
またその結果は、本人の許可なく、上司などに公開することは禁止されています。
加えて、「労働者からの申し出があった場合(一定の要件に該当すれば)、事業者は労働者に対して医師の面接指導を受けさせなければならない」「医師の意見によっては、事業者は労働者の働く環境を適宜変えなければならない」などの決まりがあります。
「労災から身を守ること」は、職場を守ることにもつながる
労働と関連して起こる災害は、本人のみならず職場全体をも巻き込むものです。
本人が、また大切な仲間が被災しないように、職場全体で気を付けて対策を講じていきましょう。
働く人の心と体を気遣う試みは、職場全体の空気を良いものにし、また仕事の効率を上げることにも役立ちます。